AI・マーケトレンド
「新規事業の市場規模を調べておいて」「競合の動向をまとめておいて」。こう言われて、検索結果を何十ページも開き、資料づくりに丸3日かかった経験はないでしょうか。しかも、時間をかけたわりに「で、結論は?」と聞かれると答えに詰まる。調査は、かけた時間と成果が比例しにくい業務の代表です。
この記事では、AIを使って市場調査・競合調査・顧客調査を1日で終わらせる手順を5ステップで解説します。ChatGPT・Gemini・Perplexity・Claudeの使い分け、AIの回答を鵜呑みにしないための出典確認の手順、そのまま使えるプロンプトまで、BtoBの実務を想定してまとめました。
30秒で分かる結論
AIリサーチの本質は「情報を集める時間」を10分の1にすること。ただし「出典を確かめる時間」は人が必ず残す
手順は「問いを1つに絞る→調査項目を決める→AIで情報収集→出典を検証→1枚にまとめる」の5ステップ
ツールは用途で使い分ける。網羅的な深掘りはChatGPTやGeminiのDeep Research系機能、出典つきの速報はPerplexity、資料の読み込みと整理はClaude
AIの回答の数字は「出典URLの一次確認」をしてから使う。確認できない数字は資料に載せない
調べた企業情報を営業リストに落とす工程までAI化すると、調査が売上に直結する
AIリサーチとは?従来の調査と何が違うのか
AIリサーチとは、生成AIに情報収集・整理・要約を任せ、人は「問いの設定」と「検証」に集中する調査のやり方です。
従来のデスクリサーチは、検索→開く→読む→メモの繰り返しでした。1テーマにつき数十ページを読むので、2〜3日かかるのが普通です。AIリサーチでは、この「集めて読む」部分をAIが数分で行います。人の仕事は前後に移動します。つまり、調べる前に「何を明らかにしたいか」を明確にすることと、出てきた情報の裏取りです。
誤解されがちですが、AIリサーチは「AIに聞けば答えが出る」ものではありません。AIは平気で古い数字や存在しない統計を出すことがあります。それでも使う価値があるのは、当たりをつける速度が桁違いだからです。3日かけて自力で集めるか、30分でAIに集めさせて2時間で検証するか。後者のほうが速く、しかも網羅性が高いというのが実務での体感です。
AIリサーチが得意な調査・不向きな調査
すべての調査がAIで置き換わるわけではありません。着手前に切り分けておくと、無駄がありません。
得意: 市場の全体像の把握、競合のサービス・価格の整理、業界用語や規制の理解、統計データの所在調べ、海外事例の収集
得意: 自社資料(議事録・アンケート自由回答・商談メモ)の要約と分類
不向き: 最新すぎる情報(発表直後の統計や価格改定)、非公開情報(競合の受注状況など)、一次情報そのもの(顧客の生の声)
不向きな領域のうち、顧客の生の声だけは代替手段がありません。AIリサーチで仮説を作り、顧客ヒアリングで検証する、という組み合わせが基本形です。
AIリサーチのやり方5ステップ
ステップ1:問いを1つに絞る
「市場について調べる」では、AIも人も迷走します。「この市場は今後3年で伸びるか、縮むか」「競合A社はなぜ値下げしたのか」のように、答えがYes/Noか一文で出る問いに絞ります。問いが3つ以上あるなら、調査を3回に分けたほうが速く終わります。
ステップ2:調査項目を決める
問いに答えるために必要な材料を先に列挙します。市場調査なら「市場規模の推計」「主要プレイヤーとシェア」「直近の参入・撤退」「規制の動き」の4点程度で十分です。この項目リストがそのままAIへの指示になります。
ステップ3:AIに情報収集させる
後述のプロンプトで、項目ごとに出典つきで回答させます。ポイントは1回で終わらせないことです。1回目の回答を読み、「この数字の根拠は?」「反対の見方はある?」と2〜3往復して掘ります。Deep Research系の機能(ChatGPTやGeminiに搭載されている、複数のWebページを自動で巡回して長文レポートを作る機能)を使う場合も、出てきたレポートに追加の質問をぶつけて薄い部分を補強します。
ステップ4:出典を検証する
資料に載せる数字・固有名詞・引用は、出典URLを実際に開いて確認します。確認する観点は3つです。①その数字が本当にそのページに書いてあるか、②いつ時点の数字か、③発行元は信頼できるか(官公庁・業界団体・上場企業のIRを優先)。出典が開けない、または見つからない数字は、どれだけそれらしくても資料から外します。
ステップ5:1枚にまとめる
調査結果は「問い→結論→根拠3点→残る不明点」の1枚構成にまとめます。集めた情報を全部載せる必要はありません。不明点を正直に書いておくと、次の調査や顧客ヒアリングの計画がそのまま立ちます。
三森の実務メモ:AIリサーチの品質は、ステップ4の検証をやるかどうかでほぼ決まります。私の体感では、AIが出す統計数字のうち1〜2割は「出典を開くと書いていない」「数年前の数字を最新として出している」のどちらかです。だから私は、社外に出す資料ではAIの数字をそのまま使ったことが一度もありません。逆に言えば、検証さえ挟めば、収集の速さは圧倒的なので使わない理由がない。「AIは下調べの天才、裏取りは新人以下」と覚えておくと、ちょうどいい距離感で付き合えます。
ツールの使い分け【2026年7月時点】
主要ツールの得意分野は次のとおりです。仕様や搭載機能は変わりやすいため、2026年7月時点の目安としてください。
ChatGPT: Deep Research機能での網羅的な深掘り調査。長文レポートの生成が得意
Gemini: Google検索との連携が強く、最新情報のカバーが速い。無料枠でも実用的
Perplexity: 回答に出典が標準で付く。速報的な調べものの最初の1手に向く
Claude: 集めた資料・議事録・PDFを読み込ませての整理と分析、レポートの文章化が得意
どれか1つに絞るなら、出典確認の習慣がつきやすいPerplexityから始めて、深掘りが必要になったらDeep Research系を足す順番をおすすめします。実務では併用が基本形です。例えば「Perplexityで市場の当たりをつける→ChatGPTのDeep Researchで論点を深掘り→集めた資料と検証済みの数字をClaudeに渡してレポート化」という3段構えにすると、各ツールの得意分野だけを使えます。全部を1つのツールで完結させようとするより、工程で切り替えるほうが結果的に速く、品質も安定します。ChatGPTとGeminiの詳しい比較は、ChatGPTとGeminiの比較記事にまとめています。
そのまま使える市場調査プロンプト
あなたはBtoB企業の事業開発担当をサポートするリサーチャーです。
以下の問いについて調査し、レポートを作成してください。
【問い】
(例:国内の〇〇市場は今後3年で拡大するか)
【調査項目】
1. 市場規模の推計(直近3年の推移が分かるもの)
2. 主要プレイヤー5社と、それぞれの特徴
3. 直近1年の参入・撤退・資金調達の動き
4. 市場に影響する規制・制度の変更予定
【制約】
・すべての数字と固有名詞に出典URLを付ける
・出典が見つからない場合は「出典なし」と明記し、推測で埋めない
・情報がいつ時点のものかを必ず併記する
・最後に「この調査で分からなかったこと」を3つ挙げるこのプロンプトの肝は制約の4行です。特に「推測で埋めない」と「分からなかったことを挙げる」を入れると、AIが無理に空欄を埋めて嘘をつく確率が下がり、調査の限界が可視化されます。
競合に絞った調査をする場合は、競合分析のやり方で解説している比較表のフォーマットにAIの回答を流し込むと、そのまま社内共有できる形になります。
三森の実務メモ:BtoBの場合、リサーチの出口は結局「どの企業に売りに行くか」です。私は市場調査の最後に、必ず「この市場で自社が売れそうな企業の条件」を書き出すようにしています。業種・規模・地域の条件さえ言語化できれば、あとはリスト化の作業です。ここを手作業でやると調査より時間がかかるので、gBizINFOのような公的データベースとAIを組み合わせて自動化する。調査→ターゲット条件→リストまでを1日で通すと、翌日から営業が動けます。「きれいなレポート」で終わる調査と、翌日の行動につながる調査の差は、この最後の一段があるかどうかです。
条件を指定して企業リストを作る手順は、営業リストの作り方で詳しく解説しています。
動画で学ぶ
AIを使った調査・マーケティングの実務ノウハウは、YouTubeチャンネル(三森のAIマーケ研究所)でも解説しています。手順を画面つきで見たい方は、記事と併せてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q. AIリサーチは無料でもできますか?
できます。GeminiやPerplexityは無料枠でも出典つきの調査が可能で、まず試すには十分です。ただしDeep Research系の長文レポート機能は有料プランに含まれることが多く、週に何本も調査するなら有料化の元は取れます。目安として、月に3件以上の調査業務があるなら有料プラン1つ(月数千円)を契約したほうが、人件費換算で圧倒的に安くつきます。
Q. AIの調査結果はどこまで信用していいですか?
「構造の理解」は信用してよく、「個別の数字」は検証が必要、が目安です。市場の全体像、プレイヤーの顔ぶれ、論点の整理といった定性的な情報は大きく外しません。一方で市場規模の金額、シェアの割合、年月日は、出典を開いて一次確認するまで社外資料に使わないでください。
Q. 機密情報や顧客データを入れて調査してもいいですか?
そのままではおすすめしません。多くのAIツールには入力データを学習に使わない設定や法人プランがありますが、設定状況は組織によって異なります。社名や個人名をマスキングして入れるか、自社のAI利用ルールを先に確認してください。ルールがまだない場合は、AI利用ガイドラインのテンプレートを参考に最低限の線引きを作っておくと安全です。
Q. 調査レポートの体裁までAIに任せられますか?
任せられます。ステップ5の「問い→結論→根拠→不明点」の構成を指定して、検証済みの情報だけを渡して清書させると、体裁の整ったレポートが数分で出ます。注意点は、清書の段階で新しい情報を足させないことです。「与えた情報以外を追加しない」と制約をつけて使ってください。
まとめ:調査は「集める」から「確かめる」の仕事に変わった
AIリサーチの手順は、問いを絞る→項目を決める→AIで集める→出典を確かめる→1枚にまとめる、の5ステップです。情報を集める時間はAIがほぼゼロにしてくれます。人の価値は、正しい問いを立てることと、数字の裏を取ることに移りました。
そして調査の出口が新規開拓なら、ターゲット条件から企業リストと営業文面の作成までを自動化したのがドヤマーケAIのドヤリストです。業種や規模の条件を指定すると、リストアップと1社ごとの営業文の下書きまで自動で生成されます。調査を翌日の営業活動につなげたい方は、無料でお試しください。編集部の補足調査データ(2026年最新・n=400)
AIリサーチのツールを使い分ける実態を、データで押さえておきましょう。株式会社スリスタが全国の会社員400名に実施した『企業の生成AI活用実態調査2026』では、業務での生成AIツール利用率はChatGPT 60.8%・Google Gemini 49.7%・Microsoft Copilot 41.8%・Claude 7.8%で、AI利用者の49.0%が複数ツールを併用(平均1.82ツール)。平均1.82ツールという併用の実態が示すとおり、リサーチでも目的に応じてChatGPT・Gemini・Perplexity・Claudeを使い分けるのが実務的です。
出典:株式会社スリスタ『企業の生成AI活用実態調査2026』(n=400)。全クロス集計は職場の生成AIツールシェア実態2026、プレスリリースはPR TIMESで公開中。
▶ 動画で学ぶ:ドヤマーケAIチャンネル(マーケティング×AIの実践)


