BtoBマーケ支援
【BtoB向け】カスタマージャーニーマップの作り方完全ガイド|6ステップで成果につながる設計術【2026年版】

30秒で分かる結論
BtoBのカスタマージャーニーマップは、6ステップで作れます。ペルソナ設定 → 検討フェーズの定義 → 各フェーズの行動・思考・感情の洗い出し → タッチポイントの整理 → 課題の特定 → 打ち手への落とし込み、という流れです。
BtoCと決定的に違うのは「登場人物が1人ではない」こと:担当者・上長・決裁者・情報システム部門など、立場ごとに知りたいことも不安も違います。1枚のマップに全員を詰め込むと使えないマップになります
作って終わりにしない:マップの価値は「どのフェーズで見込み客が離脱しているか」を特定し、打ち手を決めることにあります。壁に貼って満足するのが最大の失敗パターンです
最初から完璧を目指さない:正確さより、まず1枚作って議論の土台にすることが先です。営業へのヒアリング1時間から始められます
1. なぜBtoBでカスタマージャーニーマップが必要なのか
BtoBの購買は、認知してから契約に至るまで数ヶ月から1年以上かかることが珍しくありません。その間、見込み客は情報を集め、社内で検討し、複数の候補を比較します。
この長い過程を可視化しないまま施策を打つと、「資料はダウンロードされるのに商談にならない」「商談まで進むが失注する」といった詰まりの原因が分からないままになります。カスタマージャーニーマップは、その詰まりがどこで起きているかを特定するための地図です。
2. BtoB特有の難しさ:意思決定者が複数いる
BtoCなら「買う人」と「使う人」はたいてい同じです。BtoBでは分かれます。
担当者:課題を感じて情報を探している人。効率化や工数削減に関心があります
上長・部門責任者:予算と成果に責任を持つ人。費用対効果と他社事例を見ます
決裁者(役員クラス):経営インパクトとリスクを見ます。細かい機能には関心がありません
情報システム部門:セキュリティ、既存システムとの連携、運用負荷を見ます
この4者は同じ商品を見ていても、知りたいことがまったく違います。担当者向けの機能説明だけを充実させても、稟議は通りません。逆に経営者向けの抽象的な訴求だけでは、担当者が比較検討の土俵に載せてくれません。
実務的な対処は、まず担当者(最初に接触する人)のジャーニーを1枚作り、そこに「この段階で上長・決裁者に何を渡す必要があるか」を書き足す方法です。最初から4人分のマップを作ろうとすると、まず完成しません。
3. 作り方6ステップ
ステップ1:ペルソナを決める
誰のジャーニーを描くのかを1人に絞ります。「従業員100〜300名の製造業で、マーケティング担当は1人。リード獲得の手段が展示会しかなく困っている40代の課長」のように具体化します。ペルソナが曖昧だと、以降のすべてが曖昧になります。作り方はChatGPTでペルソナを作る方法で解説しています。
ステップ2:検討フェーズを定義する
BtoBでは「認知 → 情報収集 → 比較検討 → 社内稟議 → 導入決定」の5フェーズが基本形です。BtoCのジャーニーと違い「社内稟議」フェーズが入るのがポイントで、ここを抜かすと失注の原因を見誤ります。
ステップ3:各フェーズの行動・思考・感情を書き出す
フェーズごとに「何をするか(行動)」「何を考えているか(思考)」「どう感じているか(感情)」の3行を埋めます。ここは想像で書かず、営業担当へのヒアリングと既存顧客への質問で埋めてください。「受注が決まった決め手は何でしたか」「検討中に不安だったことは何ですか」の2問だけでも、かなりの精度で埋まります。
ステップ4:タッチポイントを整理する
各フェーズで見込み客が自社と接触する場所を並べます。検索結果、比較記事、SNS、展示会、資料ダウンロード、ウェビナー、商談、導入事例など。ここで「接触機会がまったくないフェーズ」が見つかったら、それが最優先の打ち手になります。
ステップ5:課題を特定する
フェーズ間の移行率を見て、どこで人数が大きく減っているかを探します。資料ダウンロードは多いのに商談化しないなら、情報収集から比較検討への移行に問題があります。
ステップ6:打ち手に落とし込む
特定した課題ごとに、作るべきコンテンツと担当者を決めます。「マップを作ること」ではなく「打ち手が決まること」がゴールです。ここまで到達しないマップは作らないほうがましです。
4. AIを使ってマップの叩き台を作る
ゼロから作ると数日かかりますが、AIに叩き台を出させれば半日で議論できる状態になります。ペルソナ情報と自社の商材概要を渡し、「各フェーズの行動・思考・感情・タッチポイントを表形式で出してください」と指示します。
ただし出てきたものをそのまま使ってはいけません。AIが出すのは一般論なので、自社の営業現場で実際に起きていることと突き合わせて修正する工程が必須です。AIは「たたき台を作る時間」を消す道具であって、顧客理解そのものを代替するものではありません。
5. よくある失敗と対処
作って壁に貼って終わる:最も多い失敗です。ステップ6の打ち手まで必ず到達させ、担当者と期限を決めてください
1枚に全員を詰め込む:担当者・上長・決裁者を1枚に混ぜると、誰にも使えないマップになります。まず1人分から
想像で埋める:社内の会議室だけで完結させると、実際の顧客とずれます。営業ヒアリングか顧客インタビューを必ず挟んでください
一度作って更新しない:商材や市場が変われば購買行動も変わります。半年から1年に一度は見直します
【独自調査】ジャーニー設計にAIを使う企業はどれだけあるか
本記事の「AIでマップの叩き台を作る」でも触れたとおり、カスタマージャーニー設計の初速はAIで大きく上げられます。当社が全国の会社員400名に実施した独自調査『企業の生成AI活用実態調査2026』では、業務での生成AIツール利用率はChatGPT 60.8%・Google Gemini 49.7%・Microsoft Copilot 41.8%・Claude 7.8%でした。ペルソナ案や各段階の課題出しといった作業は、すでに多くの企業がAIで下書きできる段階にあります。
重要なのは、AI利用者の49.0%が複数ツールを併用している(平均1.82ツール)ことです。叩き台の生成はChatGPT、情報の裏取りはGemini、と使い分ければ、少人数でもマップ作成を短時間で進められます。ただし、実際の顧客の声と突き合わせて磨き込む工程は人が担う領域です。AIが作るのはあくまで仮説であり、それを検証して精度を上げるのが設計者の役割になります。
とくに従業員100名以下の中小企業ではGemini(56.1%)がChatGPT(58.5%)に肉薄しており、追加コストを抑えてAIを取り込む動きが進んでいます。まずAIで叩き台を作り、人が検証して仕上げる——この進め方が、限られたリソースで成果につながるジャーニー設計の近道です。
出典:株式会社スリスタ『企業の生成AI活用実態調査2026』(n=400)。全クロス集計は職場の生成AIツールシェア実態2026(詳細レポート)、プレスリリースはPR TIMESで公開しています。
▶ 動画で学ぶ:ChatGPTにペルソナを作らせたら実用レベルだった件|プロンプトテンプレ配布(ドヤマーケAI)。ジャーニー設計の起点となるペルソナをAIで作る実演です。
【記入例つき】BtoBカスタマージャーニーマップのテンプレート
6ステップの手順だけでは、完成イメージがつかみにくいかもしれません。ここでは本記事のペルソナ例——「従業員100〜300名の製造業、マーケティング担当は1人、リード獲得は展示会頼み、40代の課長」——を使って、実際に埋めたマップの例を示します。自社のフェーズ名や課題に置き換えてそのまま使えます。
フェーズ | 行動 | 思考・感情 | 主なタッチポイント | よくある離脱・課題 | 打ち手の例 |
認知 | 展示会で名刺交換/同業の課題をネット検索 | 「うちも何か手を打たないと」と焦るが、何から始めるか分からない | 展示会、検索結果、業界メディア | そもそも自社が検索で見つからない | 課題キーワードでの記事作成、展示会リストへのフォローメール |
情報収集 | 解決策の種類を調べる/資料をダウンロード | 選択肢を整理したい。売り込みはまだ避けたい | 比較記事、お役立ち資料、ホワイトペーパー | 資料DLは多いが、その後の接点がない | ダウンロード後のステップメール、事例コンテンツの提示 |
比較検討 | 2〜3社に絞って機能・価格を比較 | 導入して失敗したくない。他社の実績を見たい | 導入事例、料金ページ、無料デモ、口コミ | 比較の土俵に乗る前に候補から外れる | 導入事例の拡充、比較表の提示、デモ・トライアル導線 |
社内稟議 | 上長・決裁者に説明する資料を作る | 稟議を通せるだけの材料があるか不安 | 提案資料、ROI試算、担当営業のサポート | 担当者は納得したが社内で通らない | 稟議用の1枚資料・費用対効果シート、決裁者向けFAQ |
導入決定 | 契約・導入準備を進める | スムーズに立ち上がり運用できるかを気にする | 商談、契約書、導入支援、情シスとの調整 | 情シスのセキュリティ確認で停滞 | セキュリティチェックシートの事前提供、導入支援体制の明示 |
この表のポイントは、右2列「よくある離脱・課題」と「打ち手の例」です。ステップ5・6で解説したとおり、マップの価値はこの2列を自社の実データで埋め、担当者と期限を決めるところにあります。左4列だけを綺麗に作って終わらせないでください。
意思決定者ごとに「渡すべき材料」を用意する
「2. BtoB特有の難しさ」で述べたとおり、BtoBでは担当者・上長・決裁者・情報システム部門で知りたいことが違います。担当者のジャーニーを1枚作ったら、社内稟議フェーズで各人に渡す材料を次のように準備しておくと、失注が大きく減ります。
担当者:他社との機能比較表、導入後の業務イメージ、よくある質問への回答。「自分が使いこなせるか」の不安を消す材料です。
上長・部門責任者:費用対効果(ROI)試算と、同業・同規模の導入事例。「投資に見合う成果が出るか」を判断する材料です。
決裁者(役員クラス):経営インパクトとリスクを1枚にまとめた資料。細かい機能ではなく「何が、どれだけ、いつ変わるか」を端的に示します。
情報システム部門:セキュリティチェックシート、既存システムとの連携可否、運用負荷の説明。ここでの停滞は導入直前の失注に直結します。
これらは「稟議が動き出してから慌てて作る」ものではありません。比較検討フェーズのうちに一式そろえ、担当者が社内を動かしやすいよう先回りして渡すのがコツです。
作成に使うツールの選び方
ジャーニーマップは専用ツールがなくても作れます。目的と体制に合わせて選んでください。
Excel・スプレッドシート:最も手軽。上の表のように行にフェーズ、列に項目を置くだけで始められます。まず1枚作って議論したい段階に最適です。
Miro・FigJam などのオンラインホワイトボード:付箋を貼りながら複数人で同時編集できます。営業・マーケ・カスタマーサクセスで意見を出し合うワークショップ形式に向きます。
専用のジャーニーマップツール:テンプレートや分析機能が充実していますが、まず作る段階ではオーバースペックになりがちです。運用が定着してから検討すれば十分です。
ツール選びで悩む時間より、まずスプレッドシート1枚で初版を作るほうが先です。ツールはあとから乗り換えられますが、顧客理解が進まないマップはどのツールで作っても使えません。
よくある質問(FAQ)
Q. 作成にどれくらい時間がかかりますか?
A. 営業ヒアリング1時間+作成半日で、議論できる初版は作れます。精度を上げるための顧客インタビューを含めると1〜2週間が目安です。初版を早く作って議論を始めるほうが、時間をかけて1人で完璧を目指すより結果的に精度が上がります。
Q. 顧客が少なくても作れますか?
A. 作れます。むしろ顧客が少ない段階のほうが、1社1社の検討経緯を詳しく聞けるため、精度の高いマップになります。受注した顧客3社に「決め手」と「不安だったこと」を聞くだけで十分に始められます。
Q. カスタマージャーニーマップとペルソナは何が違いますか?
A. ペルソナは「誰か」、ジャーニーマップは「その人がどう動くか」です。ペルソナが先で、ジャーニーマップが後になります。ペルソナなしにジャーニーは描けません。
Q. テンプレートはExcelとMiro、どちらで作るのがいいですか?
まず1枚作るならExcelやスプレッドシートで十分です。行にフェーズ、列に「行動・思考・感情・タッチポイント・課題・打ち手」を並べれば、本記事の記入例と同じ形がすぐ作れます。複数人で付箋を出し合いながら作りたい場合はMiroやFigJamが向いています。ツールよりも、右2列(課題と打ち手)を実データで埋めることのほうが重要です。
Q. BtoCのカスタマージャーニーマップと何が違いますか?
最大の違いは「社内稟議」フェーズの有無です。BtoCは基本的に本人が判断して購入しますが、BtoBは担当者が起案し、上長・決裁者・情報システム部門を通す必要があります。そのため購入者と利用者が分かれ、検討期間も数ヶ月〜1年と長くなります。担当者向けの機能訴求だけでなく、各意思決定者に渡す材料までマップに組み込むのがBtoB特有のポイントです。
Q. 一度作ったマップは、いつ見直せばいいですか?
半年から1年に一度が目安です。加えて、主力商材の追加・変更があったとき、営業から「最近の失注理由が変わってきた」という声が出たとき、広告やSEOの流入経路が大きく変わったときは、フェーズやタッチポイントを見直すサインです。マップは一度で完成させるものではなく、受注・失注の実データを反映して更新し続けることで精度が上がります。
まとめ
BtoBのジャーニーマップは6ステップ。「社内稟議」フェーズを必ず入れる
意思決定者は複数いる。まず担当者1人分から作り、各段階で上長・決裁者に渡す材料を書き足す
ゴールはマップの完成ではなく打ち手の決定。ステップ6まで到達させる
AIは叩き台づくりに使い、自社の営業現場と突き合わせて修正する
ジャーニーの各段階で見込み客を育てる具体的な手法はリードナーチャリングの記事で、コンテンツ設計の全体像はBtoBコンテンツマーケティング戦略の始め方で解説しています。

