AI・マーケトレンド
「あの件、どの資料に書いてあったっけ」。社内マニュアル、過去の議事録、提案書、料金表。会社の情報は溜まる一方なのに、必要なときに見つからない。結局、詳しい人に口頭で聞くのが最速になっていて、その人の時間が奪われ続けている。多くの会社で起きている光景です。
この状態を安上がりに解決できるのが、Googleの「NotebookLM」です。自社の資料を読み込ませると、その資料の内容だけに基づいて質問に答えてくれるAIノートです。この記事では、NotebookLMの基本的な使い方から、営業・研修・引き継ぎでの実務ユースケース、導入時の注意点までを解説します。
30秒で分かる結論
NotebookLMは「渡した資料の中身だけ」から答えるAI。一般的なチャットAIより誤情報がはるかに出にくい
使い方は3手順。ノートブックを作る→資料を追加する→質問する。ITスキルは不要
回答には「資料のどこを根拠にしたか」の引用が付くため、裏取りが一瞬でできる
音声概要機能を使うと、資料の内容を対話形式の音声にして「ながら聞き」できる
向いているのは、マニュアルQA・議事録の横断検索・研修・引き継ぎ。機密資料の扱いルールだけ先に決めること
NotebookLMとは?普通のチャットAIとの違い
NotebookLMは、Googleが提供する「ソース限定型」のAIツールです。2026年7月時点で無料から使い始められます。
ChatGPTのような一般的なチャットAIとの決定的な違いは、回答の情報源です。
一般的なチャットAI:学習した膨大な知識全体から答える。知らないことも、それらしく答えてしまうことがある
NotebookLM:ユーザーがアップロードした資料(ソース)の中だけから答える。資料にないことは「ソースに情報がない」と答える
この仕組みのため、ハルシネーション(もっともらしい誤情報)が業務上問題になりにくく、「社内資料への質問窓口」という用途に非常に向いています。さらに、回答のどの部分が資料のどこに基づいているかを引用番号で示してくれるため、確認も簡単です。
基本の使い方3ステップ
ステップ1:ノートブックを作成する
NotebookLMにGoogleアカウントでログインし、新しいノートブックを作成します。ノートブックは「テーマごとの資料箱」と考えてください。「営業マニュアル」「〇〇プロジェクト議事録」のように、目的単位で分けるのがコツです。
ステップ2:ソース(資料)を追加する
ノートブックに資料をアップロードします。PDF、Googleドキュメント、スライド、テキスト、WebサイトのURL、YouTube動画などを追加できます。1つのノートブックに複数の資料をまとめて入れられるため、「散らばった議事録を全部入れる」使い方ができます。
ステップ3:質問する
あとはチャット欄で日本語で質問するだけです。「解約時の返金ルールは?」「この3回の会議で、価格について決まったことをまとめて」のように聞くと、資料に基づいた回答が引用付きで返ってきます。
質問以外の「出力形式」も押さえておく
NotebookLMの実力は、チャットでの質疑応答だけではありません。同じ資料から、目的に応じた成果物を自動生成できます。2026年7月時点では、無料枠でも次の形式が使えます(1日あたりの生成回数などに上限あり)。
音声概要:2人の話し手が資料の内容を対話形式で解説する、ポッドキャスト風の音声。移動中の「ながら聞き」向き
動画概要:ナレーション付きのスライド解説動画。研修教材のたたき台に使える
マインドマップ:資料の論点を階層構造で図解。全体像の把握と、深掘りしたい枝のクリック展開ができる
レポート・学習ガイド:概要資料、FAQ形式の学習ガイド、ブログ下書きなどの文書化
データテーブル:資料内に散らばった数値・項目を表形式で抽出
「読んで理解する」以外に「聞く」「図で見る」の入口が用意されているため、資料が苦手なメンバーへの共有手段としても機能します。まずは質疑応答から始め、慣れたら音声概要とマインドマップを試すと、活用の幅が一気に広がります。
実務ユースケース4選
1. 社内マニュアルのQA窓口にする
就業規則、経費精算ルール、ツールの操作手順書などを入れておくと、「これ誰に聞けばいいんだっけ」という細かい質問がNotebookLMで自己解決できるようになります。総務・情シスへの同じ質問の繰り返しが減ります。
2. 議事録の横断検索と論点整理
プロジェクトの議事録を時系列で全部入れておくと、「この論点は過去にどう議論されたか」「決定事項と保留事項の一覧」を一瞬で引き出せます。議事録は作って終わりになりがちですが、NotebookLMに入れることで「あとから使える資産」に変わります。議事録そのものの作成を効率化したい方は、Claudeで議事録を作成・要約する方法も参考にしてください。
3. 営業の商品知識サポート
商品資料、料金表、よくある質問集、過去の提案書を入れたノートブックを営業チームで共有すると、新人でも「この条件の場合の見積もりの考え方は?」を即座に確認できます。ベテランの頭の中にあった知識を、聞ける形に変換する第一歩になります。
4. 提案準備の下調べを高速化する
提案先の企業から受領した資料(RFP、中期経営計画、IR資料など)を案件専用のノートブックに入れると、「この会社の経営課題として明記されているものを列挙して」「予算に関する記述はあるか」といった確認が数分で終わります。読み込み漏れによる的外れな提案を防げるうえ、引用付きなので提案書に「貴社資料の〇〇にある通り」と正確に書けます。案件が終わったらノートブックごと削除すれば、情報管理もシンプルです。
5. 引き継ぎと研修の時短
退職・異動時の引き継ぎ資料一式を入れておけば、後任者は「読む」のではなく「聞きながら把握する」ことができます。音声概要機能を使うと、資料の要点を対話形式のラジオ番組のような音声にしてくれるため、移動時間に耳で引き継ぎ内容を予習する、といった使い方も可能です。
三森の実務メモ:当社では新しいメンバーのオンボーディングに、事業説明資料と過去の主要な意思決定の記録を入れたノートブックを渡しています。以前は私が2時間かけて口頭説明していた内容を、本人が好きなタイミングで質問しながら吸収できるので、私の説明時間はほぼゼロになりました。意外だったのは、対面では聞きにくい「そもそも論」の質問がAI相手だと遠慮なく出ることです。理解の穴が埋まる速度が明らかに上がりました。
質問の精度を上げるプロンプト例
NotebookLMは普通に聞くだけでも機能しますが、出力形式を指定すると実務で使いやすくなります。議事録ノートブックで使える例です。
このノートブックの全議事録を対象に、次の形式で整理してください。
・対象テーマ:(例:新サービスの価格設定)
・出力形式:
1. 決定事項(決定した日付と根拠の会議名も示す)
2. 保留事項(保留になった理由)
3. 未回収の宿題(担当者名があれば併記)
・各項目に、根拠となるソースの引用を付ける
・ソースに記載がない事項は「記載なし」と書く(推測で埋めない)引用付きで整理されるため、そのまま次回会議のアジェンダの下書きになります。
三森の実務メモ:精度を上げる一番のコツは、プロンプトではなく「入れる資料の質」です。私は当初、手元のファイルを何でも放り込んでいましたが、古い版と新しい版の資料が混ざると、AIが古い情報を引用してしまうことがありました。今は「ノートブックに入れるのは最新版だけ。改定したら古い版を必ず削除」をルールにしています。ソース限定型AIは、ソースの管理がそのまま回答品質になります。
導入時の注意点
機密情報のルールを先に決める:何をアップロードしてよいか(顧客の個人情報、契約書などの扱い)を導入初日に明文化してください。プランによるデータの扱いの違いも公式情報で確認が必要です
共有権限に注意:ノートブックをチーム共有する際は、そのノートブックを見てよい人の範囲と、共有設定が一致しているかを確認します
上限を把握する:ソース数や容量には上限があります。2026年7月時点の無料枠でも通常の部署利用には十分ですが、大量の資料を扱う場合は有料プランを検討してください
「資料にないことは答えない」を逆手に取る:回答が「情報がない」ばかりの場合、それは資料側の不備の発見です。よく聞かれるのに資料化されていない知識こそ、次に文書化すべき対象です
NotebookLMが向かないケース
万能ではないため、次の用途は別の道具を使うほうが速いです。
新しい文章をゼロから書く仕事:NotebookLMはソースへの忠実さが持ち味で、自由な発想の文章生成は不得意です。提案書やレポートの本文執筆は、Claudeでレポート・報告書を作成する方法で解説している通常の生成AIが向きます
最新のWeb情報を踏まえた調査:ソースに入れた資料の範囲でしか答えないため、市況や競合の最新動向はWeb検索型のAIが向きます
正確な文字起こしそのもの:録音の一言一句の書き起こしが目的なら、専用の文字起こしツールを使ってください。ツールの選び方はAI文字起こしツール比較にまとめています
「既にある資料について聞く」がNotebookLM、「新しく作る・外を調べる」は他のAI。この線引きを覚えておくと、道具選びに迷いません。
動画で学ぶ
NotebookLMをはじめとするAIツールの業務活用は、YouTubeチャンネル・三森のAIマーケ研究所でも実演つきで解説しています。記事と併せてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 無料でどこまで使えますか?
2026年7月時点では、無料でもノートブック作成・資料アップロード・質問・音声概要といった中核機能を利用できます。ノートブック数やソース数、利用回数に上限があり、上位プランで拡張される形です。上限値は変更されることがあるため、本格導入前に公式サイトで最新の条件を確認してください。
Q. アップロードした資料はAIの学習に使われますか?
Googleは、NotebookLMにアップロードしたソースをモデルの学習に使わない方針を示しています。ただし、個人利用とビジネス利用(Workspace経由)でデータ保護の条件が異なる場合があるため、機密性の高い資料を扱う前に、自社の契約プランでのデータの扱いを必ず確認してください。確認が済むまでは、公開しても問題ない資料から試すのが安全です。
Q. 社内の膨大な資料を全部入れれば「社内ChatGPT」になりますか?
発想は近いですが、全部入れるのはおすすめしません。テーマの違う資料を1つのノートブックに混ぜると、回答の焦点がぼやけます。「営業」「経理」「プロジェクトA」のように目的別にノートブックを分け、それぞれに最新版の資料だけを入れる運用のほうが、実用的な精度が出ます。
Q. インタビューや会議の録音データも使えますか?
音声ファイルをソースとして追加できるため、録音からの内容確認にも使えます。ただし、話者の聞き分けや発言の正確な文字起こしが必要な業務では、専用の文字起こしツールで整えたテキストを入れるほうが精度が安定します。インタビュー音声を記事や事例コンテンツに仕上げたい場合は、録音から原稿作成までを自動化するドヤインタビューAIのほうが目的に合っています。
まとめ:溜まった資料を「答えられる資産」に変える
NotebookLMの本質は、新しい知識をくれるAIではなく、自社にすでにある知識を取り出せるようにするAIです。マニュアル、議事録、提案書。作りっぱなしで眠っている資料をノートブックに入れるだけで、「詳しい人に聞かないと分からない会社」から「誰でも聞けば分かる会社」に一歩近づきます。まずは資料が散らばって困っているテーマを1つ選んで、今日試してみてください。
そして、社内に眠る最大の知識源は、実は資料ではなく「人の頭の中」です。顧客の声や社員のノウハウをインタビューで引き出し、コンテンツ資産に変える工程は、ドヤマーケAIのドヤインタビューAIが録音から原稿化まで自動化します。資料の活用はNotebookLM、知識の資産化はドヤインタビューAI。この組み合わせで、会社の知が回り始めます。編集部の補足調査データ(2026年最新・n=400)
NotebookLMのような自社資料を読ませるAI活用は、日常のAI利用の延長線上にあります。株式会社スリスタが全国の会社員400名に実施した『企業の生成AI活用実態調査2026』では、業務での生成AIツール利用率はChatGPT 60.8%・Google Gemini 49.7%・Microsoft Copilot 41.8%・Claude 7.8%で、AI利用者の49.0%が複数ツールを併用(平均1.82ツール)。汎用チャットとNotebookLMのような資料特化型を用途で使い分けるのが、現場の現実的な使い方です。
出典:株式会社スリスタ『企業の生成AI活用実態調査2026』(n=400)。全クロス集計は職場の生成AIツールシェア実態2026、プレスリリースはPR TIMESで公開中。
▶ 動画で学ぶ:ドヤマーケAIチャンネル(マーケティング×AIの実践)


