AI・マーケトレンド
社名で検索しても、検索結果の右側に会社情報のパネルが出ない。ChatGPTに社名を聞くと「情報がありません」と返される。もしそうなら、あなたの会社はGoogleやAIから「文字列」としては見えていても、「実在する企業」としては認識されていない可能性があります。
この記事では、キーワードではなく「物事そのもの」で評価されるエンティティSEOの基本と、GoogleのナレッジグラフやAIの学習データに自社が正しく載るための、会社情報の整え方を5つのステップで解説します。専門的に聞こえますが、やること自体は地道な情報整理です。中小企業でも十分に取り組めます。
30秒で分かる結論
エンティティとは「Googleが実在を認識している物事」のこと。キーワード一致ではなく、企業・人・サービスという「モノ」単位で評価される
エンティティとして認識されると、検索のナレッジパネル表示だけでなく、AIが自社を「知っている」状態につながる
やることは5つ。①表記の統一 ②構造化データで自己申告 ③第三者ソースでの言及獲得 ④sameAsでの紐づけ ⑤AIへの浸透確認
最大の敵は表記ゆれ。社名・住所・サービス名のブレは、別の存在として分裂して認識される原因になる
効果確認は「検索結果のパネル」と「AIに社名を聞いたときの回答」の2つで行う
エンティティSEOとは?キーワードSEOとの違い
エンティティとは、Googleが「実在するモノ」として一意に認識している対象のことです。企業、人物、製品、地名、概念などが該当します。Googleはこれらのエンティティ同士の関係を「ナレッジグラフ」と呼ばれる巨大なデータベースで管理しています。
キーワードSEOとの違いを一言で言うと、次のようになります。
キーワードSEO:「エンティティSEO やり方」という文字列に対してページを最適化する
エンティティSEO:「株式会社スリスタ」という存在そのものをGoogleに正しく理解させる
たとえば「スリスタ」と検索したとき、Googleが「BtoBマーケティング支援のAIツールを提供する日本の企業」と理解していれば、検索結果にナレッジパネルが表示され、関連する検索でも文脈に応じて自社が扱われやすくなります。
なぜ2026年のいま重要なのか
理由はAIです。ChatGPTやGeminiが「おすすめの〇〇会社は?」という質問に答えるとき、AIは学習データとWeb検索から「その分野に実在する企業」を思い出そうとします。このときエンティティとして確立していない企業は、そもそも思い出される候補に入りません。
つまりエンティティSEOは、検索結果のパネル表示のためだけでなく、AI検索時代にAIから「知られている会社」になるための土台工事です。LLMO対策の基本で解説しているAI最適化の、いわば前提条件にあたります。
ナレッジグラフに載る会社情報の整え方5ステップ
ステップ1:自社情報の「正」を1つに決める(表記統一)
最初にやるべきは、社名・住所・電話番号・サービス名の正式表記を1つに確定させ、社内文書化することです。
社名:「株式会社スリスタ」「(株)スリスタ」「SURISUTA」が混在していないか
住所:ビル名の有無、全角半角、ハイフンの種類
サービス名:正式名称と略称の使い分けルール
Webサイト、プレスリリース、SNSプロフィール、外部メディア掲載時の会社概要まで、すべて同じ表記に揃えます。表記がゆれていると、Googleは「似ているが別の存在かもしれない」と判断し、情報の統合が遅れます。
ステップ2:構造化データで自己申告する
自社サイトに、Organization(組織)の構造化データを設置します。これは「私はこういう存在です」とGoogleに機械可読な形式で自己申告する仕組みです。最低限、次の項目を含めてください。
name(正式社名)、url(公式サイト)、logo(ロゴ画像)
address(住所)、foundingDate(設立日)、founder(代表者)
description(事業内容の説明文)
sameAs(後述する外部プロフィールのURL群)
書き方の詳細は、構造化データ(JSON-LD)の入れ方で実装例つきで解説しています。
ステップ3:第三者ソースでの言及を増やす
Googleは自己申告だけを信用しません。第三者のWebサイトで自社が言及されているか(サイテーション)を裏付けとして使います。中小企業が現実的に狙えるソースは次のとおりです。
Googleビジネスプロフィール(旧Googleマイビジネス)の整備。Google自身のデータベースへの直接の自己申告になり、ローカル検索やナレッジパネルの土台になる
プレスリリース配信(PR TIMESなど大手プラットフォーム)
業界メディア・地域メディアへの掲載
帝国データバンク・gBizINFOなどの企業データベース
取引先や導入先の事例ページでの社名言及
登壇イベント・セミナーの開催者ページ
ポイントは量より一貫性です。少数でも、ステップ1で決めた正式表記どおりに掲載されることが重要です。特にGoogleビジネスプロフィールは、無料で自社が最も正確に情報をコントロールできる面なので、中小企業はここから着手するのが費用対効果に優れます。
ステップ4:sameAsで散らばった自社を紐づける
X(旧Twitter)、YouTube、LinkedIn、Wantedlyなどの公式アカウントと自社サイトを、構造化データのsameAsプロパティで相互に紐づけます。これにより「サイトのスリスタ」と「XのスリスタとYouTubeのスリスタ」が同一の存在だとGoogleが確信を持てるようになります。
あわせて、AI向けにサイト構造を伝えるllms.txtの設置も有効です。手順はllms.txtの書き方を参照してください。
ステップ5:検索とAIの両方で認識を確認する
整備後は、認識のされ方を2つの窓口で確認します。
Google検索:社名検索でナレッジパネルが出るか。「関連する質問」に自社関連が出るか
AI:ChatGPTやGeminiに「株式会社〇〇はどんな会社?」と聞き、事業内容が正しく説明されるか
反映には数週間から数ヶ月かかります。月1回の定点確認をおすすめします。AIに聞いても自社が出てこない・説明が間違っている場合の掘り下げた対処は、ChatGPTで自社が紹介されない理由と対策で解説しています。
エンティティ整備でよくある失敗3つ
失敗1:サイトだけ整えて外部を放置する
構造化データを完璧にしても、第三者ソースの言及がなければ「自称」のままです。当社の観察では、ナレッジパネル表示に至った中小企業はほぼ例外なく、自社サイト外に3つ以上の一貫した情報源を持っています。サイト内の作業は全体の半分と考えてください。
失敗2:サービス名を頻繁に変える・増やす
リブランドやサービス名の乱立は、せっかく蓄積した認識をリセットします。名称変更が避けられない場合は、新旧の名称を併記した告知ページを作り、外部掲載先にも修正依頼をかけて「同一の存在の改名」だと機械にも分かる状態を作ってください。
失敗3:一度確認して満足する
エンティティ情報は放置すると劣化します。移転・役員交代・事業内容の変化のたびに、掲載面の情報が少しずつずれ始めるからです。四半期に1回、社名でのGoogle検索とAIへの質問をセットで行う「健康診断」をカレンダーに入れておくのが現実的な運用です。
三森の実務メモ:当社も以前、AIに社名を聞くと「情報が見つかりません」と返される状態でした。プレスリリースと事例記事で第三者言及を増やし、構造化データを整えてから数ヶ月後には、ChatGPTが事業内容をほぼ正確に説明するようになりました。振り返って効いたと感じるのは、派手な施策より「すべての露出面で会社説明文を一言一句揃えた」ことです。AIは複数ソースの一致を信頼の根拠にするため、同じ説明文が3箇所にあることが、違う説明文が10箇所にあることに勝ります。
表記ゆれを一掃するAI活用プロンプト
自社の表記ゆれの棚卸しは、AIに手伝わせると半日仕事が1時間になります。
あなたは企業の広報担当者です。
以下は自社に関するWeb上の掲載情報の一覧です。
表記ゆれを検出してください。
・チェック項目:社名/住所/電話番号/代表者名/サービス名/事業説明文
・出力形式:表(縦=チェック項目、横=掲載元、セル=実際の表記)
・ゆれがある箇所は【ゆれ】と印をつける
・記載がない項目は「記載なし」と書く(推測で埋めない)
【掲載情報一覧】
(自社サイト会社概要、プレスリリース、SNSプロフィール、
外部メディア掲載などの本文を貼り付け)出力された表の【ゆれ】箇所を、ステップ1で決めた正式表記に修正依頼していけば、抜け漏れなく統一できます。
三森の実務メモ:意外な盲点が「代表者名の旧字体」と「サービス名の中黒の有無」でした。人間の目には同じに見えても、機械には別文字列です。私は棚卸しの際、目視チェックをやめてAIに文字列比較させるようにしてから、見落としがゼロになりました。この種の「人間には退屈で、精度が求められる作業」こそAIに任せるべき仕事です。
動画で学ぶ
エンティティSEOを含むAI時代のSEO・マーケティング実務は、YouTubeチャンネル・三森のAIマーケ研究所でも解説しています。記事と併せてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q. ナレッジパネルはお金を払えば出せますか?
出せません。ナレッジパネルはGoogleがエンティティとして認識・信頼した結果として自動表示されるもので、広告枠ではありません。逆に言えば、本記事の5ステップのような地道な情報整備が唯一の王道です。なお、表示後はGoogleの認証手続きを行うと、パネル内容の修正提案が可能になります。
Q. Wikipediaに載っていないと無理ですか?
Wikipediaは強力なソースですが、必須ではありません。2026年7月時点では、企業データベース、プレスリリース、業界メディアなど複数の第三者ソースの一貫した情報でも、中小企業のナレッジパネル表示は十分に確認されています。掲載基準の厳しいWikipediaに無理に載ろうとするより、確実に取れる第三者言及を積み上げるほうが現実的です。
Q. 効果が出るまでどれくらいかかりますか?
構造化データの認識自体は数日から数週間ですが、ナレッジパネル表示やAIの回答への反映は数ヶ月単位で見てください。当社の経験では、集中的に整備してから明確な変化まで2〜3ヶ月かかりました。即効性はありませんが、一度確立すると競合が簡単には追いつけない資産になります。
Q. 個人(代表者)もエンティティ化すべきですか?
BtoBでは強く推奨します。「会社は知らないが、あの人は知っている」という認知経路が実際に多く、代表者や専門家個人のエンティティは会社の信頼性を補強します。Person構造化データ、著者プロフィールページ、登壇・寄稿実績の整備が基本セットです。E-E-A-Tの観点でも、記事の著者情報とエンティティの一致は重要です。
まとめ:AIに「知られている会社」は一日にして成らず
エンティティSEOは、表記統一・構造化データ・第三者言及・紐づけ・確認という地味な5ステップの積み重ねです。しかし、この土台がある会社とない会社では、AI検索時代の「思い出されやすさ」に決定的な差がつきます。
整備の成果が出ているかは、AIが自社と競合をどう紹介するかの変化で測れます。ドヤAIOを使えば、ChatGPT・Gemini・Claude・Perplexityの4エンジンでの自社の言及率と説明のされ方を毎月自動で記録できるので、エンティティ整備の効果測定にそのまま使えます。まずは現状の「知られ度」を数字で確認してみてください。編集部の補足調査データ(2026年最新・n=400)
エンティティSEOが重要なのは、ユーザーがGoogleだけでなく生成AIでも企業を調べるようになったからです。株式会社スリスタが全国の会社員400名に実施した『企業の生成AI活用実態調査2026』では、業務での生成AIツール利用率はChatGPT 60.8%・Google Gemini 49.7%・Microsoft Copilot 41.8%・Claude 7.8%で、AI利用者の49.0%が複数ツールを併用(平均1.82ツール)。複数のAIが企業情報を参照する以上、ナレッジグラフと構造化データで「実在する企業」として認識させることの価値が高まっています。
出典:株式会社スリスタ『企業の生成AI活用実態調査2026』(n=400)。全クロス集計は職場の生成AIツールシェア実態2026、プレスリリースはPR TIMESで公開中。
▶ 動画で学ぶ:ドヤマーケAIチャンネル(マーケティング×AIの実践)


