BtoBマーケ支援
Writer /
この記事の著者
おすすめの無料ドヤAIサービス!
ドヤプロマネ
案件のタスク・進捗・収支をまとめて管理し、プロジェクト運営を効率化します。
ドヤ見積もりAI
見積書作成に必要な情報整理と算出をAIで効率化し、見積業務のスピードと精度を高めます。
結論から書きます。ChatGPTはWBSの分解と、三点見積もりの叩き台づくりでは即戦力になります。ですが「この工数が妥当か」は判断できません。判断には自社の過去実績が要るからです。この記事では、スコープ確定からWBS分解、三点見積もり、依存関係、抜けの検出までを5本のプロンプトで全文公開します。あわせて、PERT期待値とバッファの計算式、そして「見積もりは出せるが実績と突き合わせられない」という限界の正体を書きます。
この記事で分かること
見積もり手法4種のうち、ChatGPTが担える範囲と担えない範囲
プロンプト5本の全文(スコープ確定→WBS分解→三点見積もり→依存関係→抜けの検出)
WBSをどこまで分解するかを決める停止条件(コピペ可)
PERT期待値とバッファの計算式(コピペ可)
見積もりを金額に変換する式と、丸め方のルール
WBS・工数見積もりを扱う手段9種の比較表(2026年8月6日 公式サイト確認)
1. ChatGPTのWBSがそのまま使えない3つの理由
「〇〇のプロジェクトのWBSを作って」と頼むと、それらしい階層構造は返ってきます。ですがそのまま関係者に配れません。理由は3つあります。
理由1:スコープが決まっていないまま分解している
WBSはスコープの分解であって、作業のアイデア出しではありません。スコープが「Webサイトをリニューアルする」のままだと、AIは一般的なWeb制作の工程を並べます。そこには、今回はやらないこと(既存コンテンツの移行は先方が行う、多言語対応は次期フェーズ、など)が反映されません。
結果として、やらない作業まで含んだWBSができ、工数が水増しされます。
理由2:粒度がそろわない
出てきたWBSを見ると、「要件定義」(20人日相当)と「favicon作成」(0.2人日相当)が同じ階層に並んでいることがあります。粒度がそろっていないWBSは、進捗率が計算できません。タスク数で進捗を測ると、faviconを終わらせただけで進んだことになります。
理由3:自社の生産性を知らない
これが本質です。「テスト設計:3人日」という数字は、誰がやるかで倍以上変わります。AIが出すのは業界の平均的な感覚に近い値であって、自社のメンバーの速度ではありません。過去の類似案件で何人日かかったかを知っているのは自社だけで、そのデータをAIは持っていません。
理由1と2はプロンプトで解決できます。理由3は解決できません。この記事の構成はこの線引きに沿っています。
2. 独自の分類軸:見積もり手法4種とChatGPTの守備範囲
工数見積もりの手法は、大きく4つに分かれます。どの手法を使おうとしているかを自覚しないまま「見積もって」と頼むから、出てきた数字の信頼度が判断できなくなります。
手法A:類推見積もり(過去の似た案件から当てる)
「前回のECサイト構築が45人日だったから、今回は規模が1.5倍で65人日」という出し方です。速いです。精度は過去案件の類似度に依存します。
ChatGPTの適性:低いです。AIは自社の過去案件を知りません。ただし、自分が過去案件のデータを渡せば、類推の計算そのものは手伝えます。
手法B:係数見積もり(規模×単位工数)
「画面数25 × 1画面あたり0.8人日 = 20人日」という出し方です。規模の指標(画面数、機能数、行数)と、単位あたりの工数(原単位)が必要になります。
ChatGPTの適性:条件付きです。原単位を自分で渡せば計算はできます。原単位そのものをAIに聞くと、一般論が返ります。その一般論を自社の数字として使うと外れます。
手法C:ボトムアップ見積もり(WBSの末端を積み上げる)
WBSを分解しきって、末端タスクごとに工数を置き、合計します。最も手間がかかりますが、抜けを発見しやすいです。
ChatGPTの適性:高いです(分解部分のみ)。WBSへの分解はAIが得意な領域です。ただし末端の工数の値は、理由3の問題が残ります。
手法D:三点見積もり(楽観・最頻・悲観の3つを置く)
各タスクに、楽観値(O)・最頻値(M)・悲観値(P)の3つを置き、期待値を計算します。不確実性の大きさを数字にできるのが利点で、バッファの根拠になります。
ChatGPTの適性:高いです。「3つの値を置き、それぞれの前提条件を書く」という作業は言語化そのものなので、AIとの相性がいいです。この記事はここを主軸にしています。
4手法の整理
手法 | 必要なもの | ChatGPTの適性 | AIに任せていい部分 | 任せてはいけない部分 |
|---|---|---|---|---|
A 類推 | 自社の過去案件データ | 低いです | 渡した過去データからの換算 | 過去案件そのものの想起 |
B 係数 | 規模指標と原単位 | 条件付き | 渡した原単位での計算 | 原単位の値の決定 |
C ボトムアップ | 分解しきったWBS | 高いです(分解のみ) | WBSへの分解、抜けの指摘 | 末端タスクの工数値 |
D 三点見積もり | 各タスクのO/M/P | 高いです | 3値の叩き台と前提の言語化 | 3値の最終確定 |
実務での組み合わせはこうなります。Cで分解し、Dで各タスクの幅を出し、AまたはBで全体を検算します。ChatGPTが担うのはCの分解とDの叩き台で、AとBの数字は自社が持ち込みます。
3. 【コピペ可】WBSをどこまで分解するかの停止条件
分解の停止条件を先に決めておかないと、AIは無限に細かくするか、大雑把なまま止まります。この条件をプロンプトに貼ります。
■ WBS分解の停止条件(すべて満たしたら、それ以上分解しない)
□ 1. 所要が「0.5人日以上、5人日以下」に収まっている
※5人日を超えるものはさらに分解する
※0.5人日未満のものは、隣のタスクに統合する
□ 2. 担当者を1人に決められる
※2人以上でしか進まないタスクは、役割ごとに分ける
□ 3. 「終わった」と言える条件を1文で書ける
※「設計する」ではなく「設計書をレビュー完了させる」
□ 4. 成果物が1つ特定できる
※成果物のないタスク(会議、調整)は、
それ自体をタスクにせず、関連する成果物タスクに含める
ただし定例会議のように継続的に発生するものは
「プロジェクト管理」として1本にまとめる
□ 5. そのタスク単体で進捗を「未着手/着手/完了」の3値で言える
※「70%完了」と言いたくなるなら、分解が足りない
■ 階層の目安
レベル1:フェーズ(要件定義/設計/実装/テスト/リリース/管理)
レベル2:成果物のまとまり(画面設計、DB設計、など)
レベル3:末端タスク(上の5条件を満たすもの)
※3階層で収まらない場合は、スコープが大きすぎる可能性が高い
■ 「8/80ルール」との関係
末端タスクを8時間以上80時間以下に収める、という広く使われる目安がある。
上記の「0.5人日以上5人日以下」は1日8時間換算でこれに沿った範囲だが、
2週間スプリントで回すなら上限を3人日に狭めたほうが管理しやすい。
自社のリズムに合わせて上限だけ調整すること。
条件5が最も効きます。「70%完了」と言いたくなるタスクは、必ず分解が足りません。この1条件だけでも、WBSの質は目に見えて変わります。
4. 【全文掲載】プロンプト5本
【】 の部分だけ差し替えて使います。順番に回してください。プロンプト2以降は、前の出力を材料にします。
プロンプト1:スコープとアウトオブスコープを確定する
WBSの前に必ずこれを回します。ここを飛ばすと、以降がすべて無駄になります。
あなたはプロジェクトマネージャーの補佐役です。
以下のプロジェクトについて、スコープを確定させるための整理をしてください。
WBSはまだ作らないでください。
【プロジェクト概要】
- 目的:【何のためにやるか。1文で】
- 成果物:【最終的に何を納品/リリースするか】
- 期間:【開始日 〜 完了希望日】
- 体制:【人数と役割。例:PM1名、エンジニア2名、デザイナー1名(週2日)】
- 制約:【予算上限、使う技術、外部依存など。分かる範囲で】
- 発注者/依頼元:【社内の誰か、社外のどこか】
【出力形式】
## 1. スコープに含まれると読み取れるもの
| # | 内容 | 概要のどの記述から読み取ったか |
|---|---|---|
## 2. スコープに含まれるか判断できないもの(要確認)
| # | 項目 | なぜ曖昧か | 確認先 | 含む場合の追加工数の見当(大/中/小) |
|---|---|---|---|---|
※このプロジェクトで最も揉めやすい論点から順に並べる
## 3. アウトオブスコープの候補
明示的に「やらない」と合意しておくべき項目を列挙してください。
一般的なプロジェクトで後から揉めやすいものを優先すること。
| # | やらないこと | 合意しないと起きること |
|---|---|---|
## 4. 前提条件(この見積もりが成立する条件)
| # | 前提 | 崩れた場合の影響 |
|---|---|---|
(例:先方のレビューは3営業日以内に返る、素材は先方が用意する)
【厳守ルール】
- 概要に書かれていないことを、確定事項として書かない
- 工数の具体的な数値をここでは出さない(大/中/小の見当までにとどめる)
- 一般論を並べず、このプロジェクトの記述に紐づくものだけを書く
出力の「2. 判断できないもの」を、そのまま依頼元に確認します。ここで確定した内容を、次のプロンプトの前提に入れます。
プロンプト2:WBSを3階層に分解する
以下のスコープに基づいて、WBSを作成してください。
【スコープ(確定版)】
(プロンプト1の出力+確認結果を貼る)
【アウトオブスコープ(絶対に含めない)】
(確定したものを箇条書きで貼る)
【分解の停止条件】
(本記事3章の停止条件をここに貼る)
【出力形式】
Markdownの表で、以下の列を持つ1つの表にしてください。
| WBS-ID | レベル1(フェーズ) | レベル2(成果物) | レベル3(末端タスク) | 完了条件(1文) | 成果物 | 想定担当ロール |
|---|---|---|---|---|---|---|
- WBS-IDは 1 / 1.1 / 1.1.1 の形式
- レベル3の行だけ「完了条件」「成果物」「担当ロール」を埋める
- レベル1・2の行は名称のみで、工数や完了条件を書かない
表のあとに、以下を出力してください。
## 分解の自己点検
| 停止条件 | 満たしていない末端タスクのWBS-ID |
|---|---|
| 0.5〜5人日に収まらない見込み | |
| 担当を1人に決められない | |
| 完了条件が1文で書けない | |
(該当なしの場合は「なし」)
## 意図的に含めなかったもの
アウトオブスコープに従って除外した作業を列挙してください。
【厳守ルール】
- アウトオブスコープの項目をWBSに含めない
- この段階では工数を書かない(次の指示で扱う)
- 「プロジェクト管理」「品質管理」など、成果物が曖昧なフェーズも
必要なら立てる。ただし末端タスクには具体的な成果物を書く
工数をここで書かせないのが要点です。分解と見積もりを同時に頼むと、工数の帳尻を合わせるために分解が歪みます。
プロンプト3:三点見積もりを出させる
以下のWBSの末端タスク(レベル3)について、三点見積もりを作成してください。
【WBS】
(プロンプト2の出力を貼る)
【前提】
- 1人日 = 【8】時間
- メンバーの経験値:【例:この技術の経験は2年程度。類似案件は1件経験済み】
- 割り込み率:【例:他案件の割り込みで、稼働の20%は取られる】
- レビュー体制:【例:社内レビューは1回、先方レビューは各成果物1回】
【出力形式】
| WBS-ID | 末端タスク | 楽観O(人日) | 最頻M(人日) | 悲観P(人日) | Oの前提 | Pのリスク要因 |
|---|---|---|---|---|---|---|
## 悲観値が大きいタスク(上位5件)
P − O の差が大きい順に5件挙げ、それぞれについて
「差を縮めるために、着手前にできること」を1行で書いてください。
## 見積もれなかったタスク
情報不足で3値を置けなかったタスクを列挙し、
何が分かれば置けるかを1行で書いてください。
【厳守ルール】
1. 3値はすべて0.25人日刻みで書く
2. O ≦ M ≦ P を必ず守る
3. 「Oの前提」には、その速度が出るための条件を具体的に書く
(例:既存コンポーネントを流用できる場合)
4. 「Pのリスク要因」には、遅れる原因を具体的に書く
(例:先方のレビューが2往復した場合)
5. 期待値・合計・バッファをここで計算しない(人間が計算する)
6. 一般的な相場ではなく、上記【前提】に書かれた条件を反映した値にする
期待値の計算をAIにさせないでください。5番目のルールは重要で、AIに合計させると数値がずれることがあります。計算は次章の式で自分でやります。
プロンプト4:依存関係とクリティカルパス候補を出す
以下のWBSについて、タスク間の依存関係を整理してください。
【WBS(三点見積もり付き)】
(プロンプト3の出力を貼る)
【出力形式】
## 依存関係表
| WBS-ID | タスク | 先行タスク(WBS-ID) | 依存の種類 | 依存の理由 |
|---|---|---|---|---|
※依存の種類は FS(先行完了後に開始)/ SS(同時開始)/ FF(同時完了)の3つだけを使う
## 並行して進められるタスクのまとまり
同時に着手できるタスクをグループにまとめてください。
| グループ | 含まれるWBS-ID | 必要な人数 |
|---|---|---|
## 最長経路の候補
先行関係をたどって最も長くなる経路を1本示し、
経路上のタスクをWBS-IDの順に並べてください。
※各タスクの最頻値Mを使って経路長を示すこと
※これは候補であり、確定したクリティカルパスではないと明記すること
## 外部依存で止まりうる箇所
自社の努力では短縮できない待ち時間を列挙してください。
(例:先方の承認待ち、外部APIの申請、素材の納品待ち)
| 箇所 | 想定待ち日数 | 前倒しでできる準備 |
|---|---|---|
【厳守ルール】
- WBSにないタスクを追加しない
- 依存の理由を必ず書く。「一般的にそうだから」は書かない
- 経路長の計算結果は概算であることを明記する
プロンプト5:抜けている定番タスクを検出する
WBSの最大の失敗は、書かれているタスクの見積もりが甘いことではなく、タスクそのものが存在しないことです。
以下のWBSを検査してください。
このWBSに「含まれていない」作業を指摘するのが目的です。
【WBS】
(プロンプト2または3の出力を貼る)
【アウトオブスコープ】
(貼る。ここに書かれているものは指摘対象から除外する)
【検査の観点】
以下の観点ごとに、WBSに該当タスクがあるかを確認し、
ない場合は「不足」として指摘してください。
1. 立ち上げ:環境構築、アカウント発行、権限設定、キックオフ
2. 合意形成:要件のレビュー、成果物の承認、仕様変更の記録
3. 品質:テスト設計、テスト実施、バグ修正の時間、受け入れテスト支援
4. 移行:既存データの移行、旧環境の停止、切り戻し手順の用意
5. 引き渡し:ドキュメント作成、操作説明、問い合わせ対応期間
6. 管理:進捗会議、報告資料作成、課題管理
7. 待ち時間:レビュー待ち、承認待ち、外部からの納品待ち
8. リリース後:初期不具合対応、監視、振り返り
【出力形式】
## 不足しているタスク
| # | 観点 | 不足しているタスク | なぜ必要か | 追加する場合の階層(WBS-ID案) |
|---|---|---|---|---|
※影響の大きい順に並べる
## 過剰の疑いがあるタスク
アウトオブスコープに近い、または重複していると読めるタスクを指摘してください。
| WBS-ID | タスク | 疑いの理由 |
|---|---|---|
## 判定
不足の指摘が0件の場合は「不足は検出されませんでした」とだけ書く。
無理に指摘を作らないこと。
【厳守ルール】
- アウトオブスコープに明記されている作業を「不足」として指摘しない
- 「一般的に必要」ではなく、このプロジェクトの成果物に紐づけて理由を書く
プロンプト5の指摘のうち、観点6(管理)と観点7(待ち時間)は、ほぼ毎回不足として出ます。ここが抜けたWBSは、実行段階で必ず超過します。
5. 【コピペ可】PERT期待値とバッファの計算式
三点見積もりが出たら、計算は自分でやります。表計算に貼れる形で書きます。
■ 三点見積もりからの計算式
【1】タスクごとの期待値(PERT期待値)
E = ( O + 4M + P ) / 6
例:O=2, M=3, P=8 のとき
E = (2 + 4×3 + 8) / 6 = 22 / 6 = 3.67 人日
【2】タスクごとの標準偏差
σ = ( P − O ) / 6
例:σ = (8 − 2) / 6 = 1.00 人日
【3】プロジェクト全体の期待値
E_total = 各タスクの E の単純合計
【4】プロジェクト全体の標準偏差
σ_total = √( σ1² + σ2² + … + σn² )
※各タスクの σ を単純に足してはいけない。
独立に振れる前提で二乗和の平方根を取る
【5】バッファの置き方(片側の信頼水準ごと)
約84%の確率で収まる線 : E_total + 1.00 × σ_total
約90%の確率で収まる線 : E_total + 1.28 × σ_total
約95%の確率で収まる線 : E_total + 1.65 × σ_total
※上記はいずれも「この線以下に収まる確率」(片側)で読む。
E_total ± 1σ の区間に収まる確率が約68%、という両側の言い方と
混同しないこと
※正規分布を仮定した目安。タスク数が少ない(10件未満)ときは
この近似が弱くなるので、係数をそのまま使わないこと
【6】表計算での書き方(Googleスプレッドシート/Excel共通)
期待値 : =(B2 + 4*C2 + D2)/6
標準偏差 : =(D2 - B2)/6
全体期待値 : =SUM(E2:E40)
全体標準偏差: =SQRT(SUMSQ(F2:F40))
90%ライン : =E41 + 1.28*F41
■ 工数から金額への変換
タスク金額 = E(人日) × 担当ロールの原価日単価
※原価日単価 = (月額人件費 + 法定福利費 + 間接費配賦) ÷ 月間稼働日数
※販売価格ではなく原価で先に計算する。粗利を見るため
■ 丸め方のルール(先に決めておく)
- 個別タスクは 0.25人日 刻みのまま丸めない
- 合計を出したあとで 0.5人日 刻みに切り上げる
- 「切り捨て」は使わない。切り捨てた分は必ず超過する
バッファを「全体に20%上乗せ」で置いている場合、この式に置き換えると根拠が説明できるようになります。不確実性の大きいタスクが多い案件ほどバッファが厚くなり、定型作業ばかりの案件では薄くなります。これは感覚と一致します。
5-5. 5本を回す順番と所要時間の目安
実際にやると、どこに時間がかかるかが分かりにくいので書いておきます。中規模(末端タスク40〜60件)のプロジェクトでの目安です。
順番 | 作業 | 所要 | 人がやること |
|---|---|---|---|
1 | プロンプト1(スコープ確定)を回します | 10分 | 出力の「判断できないもの」を依頼元に投げます |
— | 依頼元からの回答待ち | 半日〜2日 | ここが最も長いです。先に投げておきます |
2 | プロンプト2(WBS分解)を回します | 10分 | 自己点検の表を見て、粒度が崩れた行を直します |
3 | プロンプト5(抜けの検出)を回します | 5分 | 指摘を採否判断してWBSに追加します |
4 | プロンプト3(三点見積もり)を回します | 10分 | 担当予定者と1タスクずつ確認します(ここが本番) |
5 | プロンプト4(依存関係)を回します | 10分 | 外部依存の待ち日数を実際の相手に確認します |
6 | 5章の式で計算します | 10分 | 表計算に貼って計算し、丸めのルールを適用します |
プロンプト5を、3ではなく2の直後に回すのがコツです。抜けを見つけてから見積もるほうが、見積もりの手戻りが少ないです。抜けたタスクを後から足すと、依存関係も三点見積もりも作り直しになります。
合計の作業時間は1時間前後です。ただし表の「回答待ち」と「担当者との確認」は別枠で、ここを短縮しようとすると精度が落ちます。AIで短縮できるのは表の左側(作業時間)であって、右側(人がやること)ではありません。
6. ChatGPTだけで足りるケースと、足りなくなる条件
6-1. ChatGPTだけで十分なケース
単発のプロジェクトです。次に似た案件が来るか分かりません
見積もりの用途が社内の目安です。外部への提出金額の根拠にはしません
メンバーが3人以下です。誰がどれだけ速いかを全員が把握しています
過去実績のデータがそもそもありません。この場合、AIの叩き台のほうが白紙より速いです
この条件なら、上の5本をそのまま回せば大丈夫です。WBSの分解と抜けの検出だけでも、白紙から書くより明確に速いです。
6-2. 足りなくなる5つの条件
同じ種類の案件を繰り返しています。3件目以降は、AIの一般論より自社の実績値のほうが正確になります。ですが実績が記録されていないと、その優位を使えません
見積もりが受注金額の根拠になります。外に出す数字である以上、「なぜこの工数か」を説明する必要があります。「AIが出した」は根拠になりません
見積もりと実績を突き合わせたい。これが最大の壁です。ChatGPTは見積もりを出せますが、実績を持っていません。突き合わせるには、実績工数がどこかに記録されている必要があります
案件が同時に複数走っています。個別の見積もりは作れても、「今月このメンバーは何人日ぶん埋まっているか」は分かりません
見積もりの精度を上げたい。精度を上げる唯一の方法は、見積もりと実績の差分を蓄積して原単位を補正することです。この作業はプロンプトでは代替できません。
3番目が本丸です。見積もりの質は、見積もり技法ではなく、実績データの有無で決まります。
7. 見積もりと実績を突き合わせる仕組みが要る理由
もう少し踏み込んで書きます。見積もり精度が上がる仕組みは、単純です。
WBSの末端タスクごとに見積もり工数(E)を持ちます
実際にかかった時間を、同じ末端タスクの単位で記録します
案件終了後に E と実績の比率(実績÷見積もり)を出します
その比率をタスク種別ごとに集計し、次回の見積もりに掛けます
この4ステップのうち、ChatGPTが担えるのは1だけです。2〜4はデータの蓄積と集計であって、生成の仕事ではありません。
そして2で詰まる会社が多いです。実績を「案件単位」でしか記録していないと、3の比率が案件全体でしか出ません。「テスト工程だけ常に1.8倍かかる」といった、補正に使える粒度の情報が得られません。
記録の粒度が、見積もり精度の上限を決めます。逆に言えば、末端タスクの粒度で実績が取れていれば、見積もりは回を重ねるごとに勝手に良くなります。
8. 比較表:WBSと工数見積もりを扱う手段9種
列は「WBSを階層で持てるか/見積もり工数を持てるか/実績工数と突き合わせられるか/人件費単価で金額化できるか」に絞りました。ガントチャートの見た目や連携数では並べません。6章で挙げた詰まりどころに直接対応する列にしています。
料金はすべて2026年8月6日に各公式サイトで確認しました。確認できなかったものは正直にその旨を記載します。
手段 | 注力 | WBS階層 | 見積工数 | 実績との突合 | 人件費で金額化 | 料金(公式確認・2026年8月6日) | 欠点(必ず1行) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
ドヤプロマネ | ★注力 | 案件配下でタスクを管理 | 持てます | 進捗・収支・人件費を一元管理 | 人件費を含めて管理 | 月9,980円(税込)で全14サービス使い放題。無料版あり | 大規模開発向けの高度なリソース平準化やEVM分析は備えません。中小企業の案件管理という設計です |
ChatGPT(Business) | - | 出力としては作れます。保持はしません | 叩き台は作れます | できません | 計算は手伝えますが保持しません | $25/席・月(月払)、$20/席・月(年払)、最低2席。「既定でワークスペースのデータを学習に使わない」と公式明記 | 記録の置き場所ではないため、同じ案件を続けて管理できません |
ChatGPT(個人プラン) | - | 出力としては作れます | 叩き台は作れます | できません | 保持しません | 公式料金ページで金額が動的表示され、テキストとして確認できませんでした。公式ページで確認してください | 出力形式がブレるため、チームで同じ様式のWBSを作りにくいです |
Backlog | - | 親子課題で階層化 | 予定時間を持てます | 実績時間を持てます | 標準では人件費単価の設定を主目的としません | スターター月2,700円(30ユーザー・5プロジェクト、ガントチャートなし)/スタンダード月16,000円/プレミアム月27,000円/プラチナ月75,000円(いずれも税抜、年間契約で5%割引) | 下位プランにガントチャートが含まれず、階層と見積もりを扱うなら上位プランが前提になります |
Jooto | - | タスクとサブタスク | 持てます | 記録できます | 標準の主目的ではありません | 無料プラン(1ユーザー)/スターター年契約417円・月契約500円(10ユーザーまで)/ビジネス年契約980円・月契約1,300円(いずれも1ユーザー・月、税抜)/タスクDXは要問い合わせ | 案件別の原価計算を主目的とした設計ではありません |
Asana | - | プロジェクト配下でサブタスク | カスタム項目で持てます | 有料アドオンの領域 | アドオンで扱います | 無料プラン(2ユーザーまで、¥0)/Starter 年払1,200円・月払1,475円/Advanced 年払2,700円・月払3,300円(1ユーザー・月)/Enterprise は要問い合わせ。工数・予算機能は月935円/ユーザーのアドオンと公式に記載 | 工数と予算の機能が別課金のアドオンで、総額が上がりやすいです |
| - | ボードとサブアイテム | カスタム列で持てます | 記録できます | 数式列で計算は可能 | Free(2席まで、$0)/Basic $9/Standard $12/Pro $19(いずれも1席・月、最低10席)。年払で18%割引と公式に記載 | 最低10席からの課金となるプランがあり、少人数だと1席あたりの実額が上がります |
Notion | - | データベースの階層で表現 | プロパティで持てます | 手入力なら可能 | 数式で計算は可能 | Free $0/Plus $10/Business $20(1メンバー・月)/Enterprise は要問い合わせ。日本語ページ上の表示は米ドル建てで、円建て金額は確認できませんでした | 自分で設計する前提です。テンプレートを作る手間は自社が負います |
Lychee Redmine | - | Redmine系のチケット階層 | 予定工数を持てます | 実績工数を持てます | プランにより扱えます | 2026年8月6日時点で公式サイトの料金ページを取得できず、金額を確認できませんでした。公式サイトで確認してください | 料金を確認するまで比較検討の初期段階では総額が読めません |
表計算(Excel/Googleスプレッドシート) | - | 行の階層で表現 | 自由に持てます | 自分で入力すれば可能 | 数式で自由に計算できます | Googleスプレッドシート単体の利用に追加費用はかかりません。Excelは Microsoft 365 の契約に含まれます | 案件が増えるとファイルが分散し、横断集計が破綻します |
※料金を確認できなかった項目に推測値は入れていません。契約前に各社の公式ページで必ず確認してください。
この表から読み取れる3つの事実
「見積工数を持てる」手段は多いですが、「実績と突き合わせられる」手段は絞られます。この差が、見積もり精度が上がらない構造的な原因になっています
人件費で金額化できるかは、ツールの分類がタスク管理系か案件管理系かでほぼ決まります。タスク管理系は時間までは持ちますが、金額に変換する前提を持たないことが多いです
最初の1案件なら表計算とChatGPTで十分回ります。破綻するのは案件が並行して3件を超えたあたりからで、ファイルの分散が原因になります
9. ツールでは解決しない部分
9-1. 見積もりを削れという圧力
見積もりが32人日と出ても、「予算が24人日ぶんしかない」と言われる場面があります。ここで数字を24に書き換えると、WBSの意味が消えます。やるべきなのは工数を削ることではなく、スコープを削ることです。プロンプト1で作ったアウトオブスコープの表は、この交渉のために使います。
9-2. 「たぶんできる」と言ってしまう習慣
三点見積もりの悲観値Pは、正直に置かないと機能しません。Pを低く置く癖のある人は、実績も必ず超過します。これは技法の問題ではなく、悪い知らせを先に出せるかという組織の問題です。
9-3. 途中で変わる要件
どれだけ正確なWBSを作っても、要件が変われば作り直しになります。WBSの価値は、正確さより「変更が起きたときに何が影響するかが分かること」にあります。プロンプト4の依存関係表は、そのために作ります。
9-4. メンバーの生産性そのもの
見積もりの精度が上がっても、作業が速くなるわけではありません。見積もりは、遅れを早く検知するための道具であって、速度を上げる道具ではありません。ここを取り違えると、工数管理そのものが「監視」と受け取られます。
FAQ
Q1. ChatGPTの無料版でも、この5本のプロンプトは使えますか
使えます。5本とも通常のテキスト入出力で完結します。ただしプロンプト2〜5は入出力が長くなるため、無料プランでは途中で止まることがあります。OpenAIは無料プランについて「メッセージ数とアップロード数に上限あり」と公式の料金ページに記載しています(2026年8月6日確認)。対処としては、WBSをフェーズ単位に分けて回すのが現実的です。「要件定義フェーズだけ」「テストフェーズだけ」と区切れば、1回の入出力量が下がります。プロジェクトの前提を毎回貼り直したくない場合は、プロジェクト機能に前提を保存できます。プロジェクトは公式ヘルプ上「無料・有料を問わず全プランで利用可能」と記載されています(2026年8月6日確認)。
Q2. プロジェクトの情報をChatGPTに入力しても問題ないですか
判断の線引きを3段階で書きます。
顧客名・システム構成・単価情報は、多くの場合に社外秘に当たります。特にメンバーの人件費単価は、社内でも限られた人しか見られない情報であることが多いです。5章の金額計算をAIにやらせる場合、単価そのものを入力せず、比率や仮単価で計算するという回避策があります
法人向けプランでは前提が変わります。OpenAIはChatGPT BusinessおよびEnterpriseについて「既定でビジネスデータを学習に使わない」と公式に明記しています(2026年8月6日確認)。個人プランは設定によって挙動が変わるため、公式のデータ管理設定を確認します
受託案件では、顧客とのNDAが第三者サービスへの入力を制限している可能性があります。契約書の秘密保持条項を確認します
安全側に倒すなら、顧客名を伏せ、システム名を一般名詞に置き換えてから入力します。WBSの分解精度はこれでほとんど落ちません。最終的な可否判断は、自社の情報管理責任者に確認してください。
Q3. AIが出した工数をそのまま見積書に載せていいですか
載せてはいけません。理由は2章の手法A・Bで書いたとおりで、AIは自社の生産性を知りません。使い方としては、①AIの三点見積もりを叩き台にする、②担当予定者に「この3値で妥当か」を1タスクずつ確認する、③自社の過去案件で近いものがあれば、その実績で検算する、という順になります。②を飛ばすと、実行時に担当者が納得していない工数で進むことになり、遅延が発生しても誰も申告しない状態になります。
Q4. 期待値の計算をChatGPTにやらせてはいけないのはなぜですか
生成AIは数え上げと四則演算を保証しないためです。特に30行を超える表の合計は、ずれることがあります。ずれても出力の見た目は正常なので、検算しない限り気づけません。5章の式を表計算に入れれば計算は一瞬で終わるので、そこはAIに任せる必要がありません。AIに任せるのは「3つの値を置く根拠を言語化する」部分で、算術ではありません。
Q5. WBSの階層は何階層が適切ですか
3階層を基本にします。4階層以上が必要になったら、そのプロジェクトは分割を検討したほうがいいです。実務上、レベル3の末端タスクが80〜120件を超えると、Excelでも管理しきれなくなります。逆に末端タスクが20件を下回る場合は、分解が粗すぎるか、そもそもWBSを作るほどの規模ではありません。末端タスク30〜80件が、3階層で扱いやすい範囲になります。
Q6. 見積もりと実績の差を、どのくらいの期間で補正できますか
同種の案件が3件たまると、傾向が見え始めます。ただし条件があります。3件とも末端タスクの粒度で実績が取れていること、タスク種別の分類が3件で共通していることです。案件ごとにWBSの分け方が違うと、比率を集計できません。だから、WBSのテンプレートを持つことが先になります。プロンプト2をそのまま使い回すと、フェーズの分け方は自然に揃います。これは意外に効きます。
見積もりと実績を、同じ場所で持ちたい場合
この記事の5本は、案件が単発で、見積もりの用途が社内の目安であれば、それだけで十分に機能します。プロンプト5(抜けの検出)だけでも回す価値があります。WBSの失敗の大半は、工数の甘さではなくタスクの欠落から起きます。
足りなくなるのは、同じ種類の案件を繰り返し始めたときです。見積もりを出しても実績と比べられないと、何回やっても精度が上がりません。案件が同時に3件以上走っていて、末端タスクの粒度で実績工数を取りたくて、そこに人件費単価を掛けて案件別の粗利まで見たい——この3つが同時に当てはまるなら、案件の進捗・収支・人件費を一元管理するドヤプロマネが候補になります。月9,980円(税込)の統一プランで、ドヤマーケAIの全14サービスを同じ料金で使えます。無料版があるので、まず進行中の1案件で、この記事のWBSをそのまま入れて比べてみてください。
ただし、道具を入れても実績が入力されなければ何も変わりません。入力が続く粒




