AI・マーケトレンド
月1万円で業務はどこまでAI化できるか|実際の線引き

月1万円という予算で決まるのは「何個のツールを契約できるか」であって、「業務がどこまで自動になるか」ではありません。この2つを混同すると必ず期待が外れます。AI化には到達度が4段階あり、予算で動くのは主に2段階目までです。3段階目に上げるものは金額ではなく、社内に蓄積された入力データと判断ルールになります。
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この記事で分かること
「どこまでAI化できるか」を金額で考えると答えが出ない理由
AI化の到達度を4段階に分ける軸(L0〜L3)
18の業務を到達度で並べた一覧表
月1万円で組める3パターンの予算配分と、それぞれの実額
月1万円以内で契約できる選択肢の比較表(公式サイトで料金確認済み)
月1万円で買えないもの5つ
到達度を1段上げるために必要な3条件
本記事の前提を先に書きます。掲載している料金は2026年8月6日に各社の公式ページで確認した記載にもとづきます。公式ページで金額を確認できなかったものは、確認できなかったと明記しました。全ツールを実際に契約して同一業務を流した検証記事ではなく、公開されている料金と機能仕様から、予算1万円で到達できる範囲を設計する記事として書いています。
1. 「どこまでAI化できるか」に答えが出ない理由
この質問に答えが出ないのは、聞いている人と答える人で「AI化」の意味がずれているからです。
同じ「議事録をAI化した」でも、実態は3種類あります。
録音から文字起こしが出るようになった(テキストの山が手に入った)
要約と決定事項の抽出まで出るようになった(人が整えれば配れる)
配布可能な議事録が自動で共有先に届くようになった(人は承認だけ)
3つ目を想像して「AI化する」と言い、1つ目の状態を手に入れて「思ったほど楽にならなかった」と結論します。これが月1万円のAI導入で最も多い失敗の形になります。ツールの選定ミスでも、予算不足でもありません。到達度の合意を取らずに始めたことが原因です。
だから最初に決めるのは予算ではありません。到達度の定義になります。
2. 分類軸:AI化の到達度を4段階に分ける
L0:AIが触れない領域
人が対面で行うこと、身体を使うこと、そして責任の引き受けそのものが仕事の中心にある業務です。値決め、雇用の判断、謝罪、契約の締結、現場作業。AIが補助材料を出すことはあっても、業務そのものは人に残ります。
L1:材料型(AIが材料と候補を出す)
AIの出力は、人が使う原材料になります。文字起こしのテキスト、企業リストの一覧、検索結果の要約、候補案の羅列。ここから先の選別・判断・仕上げは全部人がやります。
この段階でも工数は減ります。ゼロから素材を作る時間が消えるからです。ただし「AIに任せた」という感覚は生まれません。
L2:下書き型(AIが8割作り、人が仕上げる)
成果物の形をしたものが出てきます。記事の下書き、スライド、提案書、評価コメント、営業メール。人がやるのは事実確認と修正で、作業時間は元の2〜4割になります。
月1万円の予算で現実的に狙えるのは、ここまでです。
L3:完成型(人は承認だけ)
出力がそのまま社外・社内に出せます。人の作業は最終承認のクリックだけになります。定型度が極端に高く、間違えたときの損害が小さい業務でのみ成立します。
4段階の判定表
段階 | AIの出力 | 人の作業 | 元の工数に対する残存 | 成立条件 |
|---|---|---|---|---|
L0 | 参考情報のみ | 業務そのもの | 100% | - |
L1 | 材料・候補 | 選別・判断・仕上げ | 50〜80% | 入力(音声・URL・条件)が用意できます |
L2 | 成果物の下書き | 事実確認・修正・承認 | 20〜40% | 型(フォーマット)と自社ルールを渡せます |
L3 | 完成物 | 承認のみ | 5〜15% | 定型度が高く、誤りの損害が小さく、判定基準が機械可読です |
なぜこの軸で分けると設計が決まるのか
L1とL2の間には道具の差があり、L2とL3の間には社内データの差があります。この2つの壁は性質が違います。
L1からL2へは、道具を替えれば上がります。文字起こしだけのツールから、要約と構成まで出すツールに替えます。ここは月数千円で動きます。
L2からL3へは、道具では上がりません。「何を正解とするか」の基準が社内で言語化され、過去の実例が参照できる形で蓄積されていて、間違えたときに誰が責任を取るかが決まっている必要があります。これは契約では買えません。
3. 18業務を到達度で並べる
自社の業務を当てはめるための一覧にします。到達度は「2026年8月時点で、月1万円以内の一般的なサービスで到達しうる上限」として置きました。より高額な専用システムや個別開発を入れれば上がる業務もあります。
# | 業務 | 到達しうる上限 | AIが出せるもの | そこで止まる理由 |
|---|---|---|---|---|
1 | 会議の文字起こし | L2 | 発言録+要約+決定事項の抽出 | 誰の発言かの誤り、社内用語の誤変換が残ります。配布前の確認は消えません |
2 | 記事・コラムの執筆 | L2 | 構成案と本文の下書き | 事実の裏取りと、自社にしか書けない一次情報の追加が残ります |
3 | スライド・提案資料 | L2 | 構成と全ページの下書き | 数字の正しさ、社内の言い回し、当日の力点は人が入れます |
4 | 営業リストの作成 | L2 | 条件に合う企業リスト | 実在確認、重複排除、優先順位付けが残ります |
5 | 営業メールの文面 | L2 | 相手別の下書き | 送信前の宛名・事実確認。送る判断は人です |
6 | 商談前のリサーチ | L2 | 企業概要・課題仮説・想定質問 | 仮説の採否と、当日の切り出し方は人です |
7 | バナー・画像の制作 | L2 | 複数案の生成 | ブランド規定への適合、日本語組版の確認 |
8 | ペルソナ・ターゲット設計 | L1〜L2 | 複数体のペルソナ案 | 自社の顧客実態との突き合わせ |
9 | SNS投稿文 | L3に近い | 投稿文そのもの | 定型度が高く損害が小さい業務なら承認だけで回ります |
10 | 定型メールの返信 | L2 | 返信文の下書き | 例外条件の判断が人に残ります |
11 | 勤怠の打刻集計 | L3(AIではなく自動化) | 集計・残業のアラート | そもそもAIではなくシステムの自動計算の領域です |
12 | 人事評価コメント | L2 | 観察事実からの下書き | 処遇の根拠記録は人が書きます。責任の所在の問題です |
13 | 案件の進捗・収支管理 | L1〜L2 | 集計・遅延の検出 | 入力されていない工数は集計できません |
14 | 経理の仕訳 | L2 | 仕訳候補の提示 | 最終確認と申告の責任は人(税理士含む)です |
15 | 契約書のレビュー | L1 | 条項の抜け・リスク箇所の指摘 | 法的判断は弁護士の領域です。指摘は材料にとどまります |
16 | 採用の書類選考 | L1 | 要件との適合度の整理 | 採否は人の判断です。差別的取り扱いの回避も人の責任です |
17 | 顧客への謝罪・交渉 | L0 | 想定問答の準備まで | 相手が求めているのは責任を負う人間の言葉です |
18 | 値決め・与信判断 | L0 | 参考データの整理まで | 経営の意思決定そのものです |
この表の読み方
L2が圧倒的に多いです。これが月1万円のAI化の現実的な姿になります。「人がやる作業が消える」のではなく「作業の始点が白紙から8割地点に移動する」ということです。
そして11番(勤怠集計)だけ性質が違います。これはAIの話ではなく、システムの自動計算の話です。AI化と自動化を混ぜないほうがいいです。自動化のほうが確実で、しかも安いからです。月1万円の予算で最初に効くのは、AIより自動化であることが多いです。
4. 月1万円で組む3パターン
同じ1万円でも、配分の仕方で到達する範囲が変わります。3パターンを実額で並べます。料金はすべて2026年8月6日に公式サイトで確認した記載にもとづきます。
パターンA:単品を積み上げる
必要な領域ごとに専業サービスを契約する構成です。
【想定】従業員5名。営業2名、制作2名、管理1名
ChatGPT Plus(1名分) 月20米ドル
※help.openai.comに「$20/month (billed monthly)」と記載
Notta プレミアム(1名分) 月1,185円(税込・年払い時の月額換算)
Zoho CRM スタンダード(2名分)月3,520円(税抜・1,760円×2)
ハーモス勤怠(5名) 0円(30名以下は無料プラン)
─────────────────────────────
円建て小計 4,705円(税表記が混在)
ドル建て小計 $20/月
ドル建てを1ドル150円で概算すると3,000円です。合計で概ね7,700円前後になります。
ここまでで到達できるのは、文字起こし(L2)・汎用の文章作成(L2)・営業管理(自動化)・勤怠(自動化)の4領域だけです。バナー制作、スライド生成、営業リスト、商談準備、記事執筆は1つも入っていません。
そこに営業リストを足すと、たとえばウリゾウのBasicプランは月9,900円(税込)で初月に初期費用5,500円が加わると公式料金ページに記載されています。この1本だけで予算を超えます。
パターンAの結論:月1万円では4領域が限界になります。
パターンB:汎用AI1本+各社の無料枠で組む
ChatGPT(無料プラン) 0円
Notta フリー 0円(月120分・1回3分まで)
ハーモス勤怠(30名以下) 0円
Zoho CRM(3ユーザーまで無料) 0円
Gamma(Freeプラン) 0円(1プロンプトあたり10スライドまで)
─────────────────────────────
合計 0円
0円で組めます。ただし制約がそのまま業務の制約になります。
Nottaのフリープランは「1回につき3分まで」と公式に記載があるため、1時間の会議はそのままでは処理できません
ChatGPTの無料プランは、モデルへのアクセス・メッセージ数・アップロード数に制限があると公式料金ページに記載があります
Gammaの無料プランは1プロンプトあたり10スライドまでと公式に記載があります
Zoho CRMの無料枠は3ユーザーまでです。営業が4人になった時点で有料化します
無料枠は上限に当たった瞬間に業務が止まる設計になっています。試す段階では最適ですが、本番運用の主軸には置きにくいです。
パターンC:業務スイート+汎用AIで組む
【想定】従業員5名
Microsoft 365 Business Standard + Copilot Business(1名分)
月3,523円(年払い・税抜/公式の価格比較ページ記載)
Microsoft 365 Business Basic(残り4名分)
月4,196円(1,049円×4/年払い・税抜)
─────────────────────────────
合計 7,719円(税抜)
メール・カレンダー・ファイル共有という土台に、1名分だけAI機能を載せる構成になります。汎用の文書作成は上がりますが、バナー・スライド・営業リスト・商談準備・記事執筆といった制作系の領域は含まれません。
パターンD:統合型を1本
ドヤマーケAI 統一プラン 月9,980円(税込/14サービス使い放題・人数課金なし)
─────────────────────────────
合計 9,980円(税込)
バナー、広告バナー、記事作成、インタビュー記事、ペルソナ、AI可視性の定点観測、スライド、営業リスト、商談準備、商談中の応答支援、営業管理、タレントマネジメント、勤怠、案件管理の14領域が同じ料金に入ります。
ただし、汎用チャットAI(ChatGPT/Claude/Gemini)、ドキュメント管理(Notion等)、Web会議、メール・カレンダーは含まれません。この4つはどの構成でも別途必要になるので、パターンDでも実際には汎用AIの費用が上乗せされます。
4パターンの到達領域
パターン | 月額 | 到達できる領域数 | 到達度の上限 | 最大の弱点 |
|---|---|---|---|---|
A 単品積み上げ | 約7,700円($20を150円換算) | 4領域 | L2 | 領域を増やすと即座に予算を超えます |
B 無料枠 | 0円 | 5領域(各上限つき) | L1〜L2 | 上限到達で業務が止まります。会議1時間が処理できません |
C 業務スイート | 7,719円(税抜) | 土台+汎用文書 | L2 | 制作系が1つも入りません |
D 統合型1本 | 9,980円(税込) | 14領域 | L2 | 汎用チャットAI・ドキュメント管理・Web会議は別途必要です。各領域の機能の深さは専業に劣ります |
予算を「領域数」で使うか「1領域の深さ」で使うかの選択になります。どちらが正しいということはありません。制作系の業務が週に何時間あるかで決まります。
5. 【コピペ可】自社の業務を到達度で判定するシート
自社の業務がL1で止まるのかL2まで行くのかを、契約前に判定します。1業務あたり3分で終わります。
【AI化 到達度 判定シート】
業務名:______________________ 現在の月間工数:____時間
■ Q1. その業務の成果物には、決まった型(フォーマット)があるか
□ ある(過去の完成物を3つ以上見せられる) → +2点
□ 型は暗黙。人によって違う → +1点
□ 毎回ゼロから作る → 0点
■ Q2. 「良い出来」の判定基準を、他人に文章で説明できるか
□ 説明できる(チェック項目が書き出せる) → +2点
□ 「見れば分かる」レベル → +1点
□ 判定できるのは特定の1人だけ → 0点
■ Q3. AIに渡す入力(材料)は、その場でそろうか
□ そろう(音声・URL・数値・過去実績がある) → +2点
□ 集めれば1時間以内でそろう → +1点
□ 人の頭の中にしかない → 0点
■ Q4. 出力を間違えたときの損害はどれくらいか
□ 社内で気づいて直せる程度 → +2点
□ 社外に出るが、訂正できる → +1点
□ 契約・法令・処遇に直結する → 0点
■ Q5. その業務は月に何回発生するか
□ 20回以上 → +2点
□ 4〜19回 → +1点
□ 3回以下 → 0点
■ 判定
合計8〜10点 → L3が狙える(承認だけの運用を設計する価値がある)
合計5〜7点 → L2(下書き型)。ここを狙うのが最も費用対効果が高い
合計2〜4点 → L1(材料型)。工数は減るが、任せた感覚は出ない
合計0〜1点 → L0。AI化の対象から外し、別の手段を考える
■ 補足の使い方
Q4が0点の業務は、他が満点でもL2までで止める。
Q5が0点の業務は、点数が高くても契約を増やしてまでAI化する価値が薄い。
まずQ5が2点の業務から着手する。
このシートで自社の主要業務10個を採点すると、予算を投じるべき業務が2〜3個に絞られます。1万円をその2〜3個に集中させます。
6. 【比較表】月1万円以内で契約できる選択肢
料金はすべて2026年8月6日に公式サイトで確認しました。金額の記載を確認できなかったものは、そう書いています。
サービス | 注力 | 公式に確認できた料金 | 到達度の上限 | 1万円予算での位置づけ | 欠点・注意点 |
|---|---|---|---|---|---|
ドヤマーケAI(自社サービス) | ★注力 | 公開。 統一プラン月9,980円(税込)。14サービス使い放題・人数課金なし。無料版あり | L2(14領域) | 予算のほぼ全額。制作系を含む領域数を最大化する選択です | 汎用チャットAI・ドキュメント管理・Web会議・メールは含まれません。各領域の機能の深さは専業ツールに劣ります。導入実績が大手より浅いです |
ChatGPT | - | 一部公開。 無料プランは0米ドル。Plusは月20米ドル(billed monthly/公式ヘルプ記載)。Business/Enterpriseは問い合わせ制 | L2(汎用) | ドル建てのため円換算額が変動します。1名分で予算の約3割です | 業務データが蓄積されません。都度プロンプトを貼り直す運用になります。無料プランはメッセージ数等に制限があると公式に記載があります |
Notta | - | 公開。 フリー0円(月120分・1回3分まで)、プレミアム月1,185円(税込・年払い月額換算)、ビジネス月2,508円(税込・同)。全て税込表記 | L2(文字起こし+要約) | 予算の1〜2割で会議領域を確保します | フリープランは1回3分までのため、実際の会議には使えません。話者の識別誤りは残ります |
Zoho CRM | - | 公開。 スタンダード1,760円/ユーザー/月、プロフェッショナル3,260円、エンタープライズ5,660円、アルティメット7,360円(いずれも税抜)。3ユーザーまで永久無料 | 自動化(AI化ではありません) | 3名以下なら0円です。4名目から人数課金です | 人数課金です。営業が増えるほど比例して増えます。年間契約で割引がある一方、月払いは割高になります |
ハーモス勤怠 | - | 公開。 30名以下は無料(初期費用0円、データ保存1年、広告表示あり)。有料は1人あたり月100円(税抜)〜、月額プランの最低利用料金3,000円(税別)。有給休暇管理/届出申請は1人あたり月100円(税抜) | 自動化(AI化ではありません) | 30名以下なら0円です。予算を使わずに1領域を埋められます | 無料プランはデータ保存1年・広告表示ありです。31名を超えると有料化し、オプションは別課金になります |
Microsoft 365(Copilot付き) | - | 公開。 Business Basic 1,049円/ユーザー/月、Apps for business 1,499円、Business Standard + Copilot Business 3,523円、Business Premium + Copilot Business 4,797円(いずれも年払い・税抜) | L2(汎用文書) | 1名分にCopilotを載せて残りをBasicにすると5名で約7,700円です | 年間サブスクリプションの自動更新が前提の価格です。制作系(バナー・スライド生成・営業リスト)は含まれません |
ウリゾウ(Urizo) | - | 公開。 無料0円(1週間・計1,500件まで)、Basic月9,900円(5,000件)、Standard15,400円、Premium23,100円、Super Premium44,000円。税込。初期費用5,500円(初月のみ) | L1〜L2(営業リスト) | Basic1本で予算を超えます | 収集元サイトの利用規約確認は利用者の責任になります。銀行振込は6か月以上の契約が条件と公式に記載があります |
Gamma | - | 一部確認。 Free(1プロンプトあたり10スライドまで)、Plus(同75スライドまで)、Pro、Ultraの4プラン構成を公式ページで確認。金額は公式ページ上で確認できなかった | L2(スライド) | 金額未確認のため予算に組み込めません | 本記事では料金を確認できていません。検討する場合は公式サイトで直接確認してください。無料プランはスライド数に上限があります |
Canva | - | 確認できなかった。 公式料金ページに本記事の執筆時点でアクセスできず、金額を確認していない | L2(画像・資料) | 金額未確認です | 本記事では公式情報を確認できていません。必ず公式サイトで直接確認してください |
Adobe Express | - | 確認できなかった。 公式の日本向け料金ページで金額表示を確認できなかった | L2(画像・バナー) | 金額未確認です | 本記事では金額を確認できていません。必ず公式サイトで直接確認してください |
表から読み取るべきこと
1つ目です。円建てとドル建てが混ざります。ドル建てのサービスを含む構成は、為替で月額が動きます。1ドル150円と160円では、$20の契約が月3,000円と3,200円になります。1万円の予算に対して200円の変動は無視できません。
2つ目です。無料枠が充実している領域(勤怠、CRM、文字起こし)と、無料枠がほぼ機能しない領域(営業リスト、制作系)がはっきり分かれます。無料枠が効く領域に予算を使わないのが基本になります。
3つ目です。人数課金のサービスは、今の人数ではなく1年後の人数で計算します。3名で無料だったCRMは、5名になれば月3,520円(税抜)になります。
7. 月1万円で買えないもの
正直に書きます。以下は予算1万円では手に入りません。金額の問題であり、工夫では埋まりません。
7-1. 全社員分のライセンス
1万円は「1〜数名分」の予算です。人数課金のサービスを全社員に配ると、10名で数万円になります。人数課金でない統合型を選ぶか、使う人を絞るかの二択になります。
7-2. SSO・監査ログ・権限の細分化
誰がいつ何を入力したかの記録、シングルサインオン、部署別の閲覧制限。これらは上位プランかエンタープライズ契約の機能として提供されることが多いです。内部統制やISMSの要求がある会社は、1万円の構成では要件を満たせない可能性が高いです。契約前に自社の情報セキュリティ規程と突き合わせます。
7-3. 基幹システムとの連携
会計、販売管理、既存の顧客データベースとの連携。API連携が使えるプランは上位に置かれていることが多く、加えて連携の設計・実装に人手がかかります。1万円の構成は手動のCSV入出力を前提にすることになります。
7-4. サポートとSLA
初期設定の代行、専任担当、稼働保証。低価格帯のサービスは基本的に自走前提になります。設定でつまずいたときに社内で解決できる人がいるかを、契約前に確認します。
7-5. 業種特有の知識
建設、医療、士業、運送。業界固有の帳票や法令要件に対応した機能は、業種特化パッケージの領域になります。汎用のAIサービスに業界知識を期待すると、出力の手直しに想定以上の時間がかかります。
8. 到達度を1段上げるのは、金額ではない
L1をL2に上げるのは道具の交換で済みます。L2をL3に上げるのに必要なのは3つで、いずれも契約では買えません。
条件1:正解の定義が文章になっていること
「良い提案書」の条件が、チェック項目として書き出されていることです。誰が見ても同じ判定になる状態です。ここが人の頭の中にある限り、承認作業は消えません。
条件2:過去の実例が参照できる形で残っていること
過去の完成物が、検索できる場所に、種類ごとに整理されて置かれていることです。個人のPCとメール添付に散らばっている状態では、AIに渡す参照が作れません。
条件3:誤ったときの責任の所在が決まっていること
L3は「人が確認しない」運用になります。誤りが外に出たときに誰が責任を負うかが決まっていない業務を、L3にしてはいけません。これは技術の問題ではなく、組織の意思決定になります。
この3条件を整える作業には、月1万円のツール代よりはるかに大きい時間がかかります。だからこそ、最初からL3を狙いません。L2で十分に効果は出ます。
9. 1万円のAI化で崩れる5つのパターン
9-1. 領域を広げすぎて、どれも使われない
5つのサービスを同時に契約し、どれも初期設定の途中で止まります。1万円で契約できる本数が増えたことが、そのまま失敗要因になります。最初の1か月は1領域に絞ります。
9-2. 無料枠の上限に業務が当たって止まる
会議が1時間あるのに、無料の文字起こしは1回3分までです。締切当日に上限に当たり、結局手作業でやり直すことになります。無料枠は検証用と割り切ります。本番に載せるなら、上限が業務量を上回っているかを先に確認します。
9-3. ドル建て契約で予算が読めなくなる
複数のドル建て契約を持つと、為替で月額が動きます。加えて、円換算のタイミングがカード会社ごとに違います。経理から見ると毎月の金額が一致しない請求が並びます。
9-4. 「AI化」と「自動化」を混ぜる
勤怠集計、請求書の発行、定型の転記。これらはAIではなく自動計算やRPAの領域で、そちらのほうが確実で安いです。AIで解こうとすると、確実性が落ちて費用が上がります。判定シートのQ2で「判定基準が文章で書ける」業務は、まず自動化を検討します。
9-5. 効果を「時間」で測らずに「気分」で測る
導入前の工数を測っていないので、効果が語れません。3か月後に「なんとなく楽になった気がする」で更新判断をすることになります。導入前に対象業務の月間工数を実測します。ストップウォッチでなくて構いません。1週間の記録で足ります。
10. FAQ
Q1. 月1万円で「社員1人分の仕事」が減りますか。
減りません。第3章の一覧のとおり、月1万円の構成で到達できるのはL2(下書き型)が中心になります。作業時間が2〜4割まで縮む業務は出ますが、業務そのものが消えるわけではありません。人員計画を、この予算のツール導入を前提に組むのは避けたほうがいいです。
Q2. 無料のAIだけで済ませられませんか。
検証と、業務量が小さい会社なら済みます。ただし第4章のパターンBに書いたとおり、無料枠には明示的な上限があります。Nottaのフリープランは1回3分まで、Gammaの無料プランは1プロンプトあたり10スライドまでと公式に記載があります。上限が自社の業務量を上回っているかを、契約前ではなく利用前に確認します。
Q3. 単品を積み上げるのと、統合型1本と、どちらが得ですか。
使う領域が3つ以下なら単品のほうが安いです。4領域を超えると統合型のほうが安くなる可能性が高いです。第4章のパターンAで、4領域だけで約7,700円になりました。ここに制作系を1つ足すと1万円を超えます。自社が使う領域を数えることが、金額の比較より先になります。
Q4. 汎用AI(ChatGPTなど)1本に統合すれば安く済みませんか。
文章とアイデア出しの領域では機能します。ただし勤怠の打刻集計、営業データの蓄積、企業データベースの照会は、汎用チャットAIの守備範囲の外になります。データを蓄積して次回に引き継ぐ用途は、汎用AIでは代替しにくいです。この線引きは第2章のL1/L2の違いではなく、道具の種類の違いになります。
Q5. 途中で人が増えたら、月額はどう変わりますか。
人数課金のサービスは比例して増えます。Zoho CRMは3ユーザーまで無料でその先は1ユーザーあたり月1,760円(税抜)から、ハーモス勤怠は30名以下が無料でその先は1人あたり月100円(税抜)からと公式に記載があります。人数課金がないサービスと、あるサービスを分けて把握しておきます。増員計画がある会社は、今の金額ではなく1年後の金額で比較します。
Q6. 為替が動いたら、予算はどれくらいぶれますか。
ドル建て契約1本($20)で、1ドル150円と160円の差は月200円になります。3本持てば600円で、1万円の予算に対して6%の変動になります。円建てのサービスで組めば、この変動は発生しません。海外サービスを使うなというより、予算の何%がドル建てかを把握しておきます。
Q7. 契約したのに使わなかった場合、どうすればいいですか。
1か月使わなかった時点で、原因を「設定が終わっていない」「業務に合わない」「担当者がいない」の3つに切り分けます。設定が終わっていないだけなら、もう1か月だけ延ばして期限を切ります。業務に合わないなら解約します。判断を先送りしたまま課金が続くのが、最も無駄が大きい形になります。
11. 今月やること
主要業務10個を、第5章の判定シートで採点します。所要は30分です。ここで予算を投じる業務が2〜3個に絞られます。
その2〜3個の月間工数を、1週間だけ記録します。導入前の数値がないと、3か月後に効果を判定できません。
無料枠で試せる領域は、契約前に上限を確認します。1回3分、10スライド、3ユーザーといった上限が、自社の業務量を上回っているかを見ます。
制作系(バナー、スライド、記事、営業リスト、商談準備)を含めて4領域以上をAI化したい。そして人数課金で膨らむ構成は避けたい。この条件なら、自社サービスのドヤマーケAIが候補になります。統一プラン月9,980円(税込)で14サービスが人数課金なしで使え、無料版で実際の出力を見てから判断できます。汎用チャットAI・ドキュメント管理・Web会議は別途必要になる点は、契約前に織り込んでおいてください。
ドヤマーケAI 14サービス一覧:https://doya-ai.surisuta.jp/all-in-one
本記事で参照した公式ページ(すべて2026年8月6日確認)
OpenAI ChatGPT料金ページ:https://chatgpt.com/pricing
OpenAI ヘルプ「What is ChatGPT Plus?」:https://help.openai.com/en/articles/6950777-what-is-chatgpt-plus
Notta 料金ページ:https://www.notta.ai/pricing
Zoho CRM 料金ページ:https://www.zoho.com/jp/crm/zohocrm-pricing.html
ハーモス勤怠 料金ページ:https://hrmos.co/kintai/price/
Microsoft 365 法人向けプラン比較:https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/business/compare-all-microsoft-365-business-products
ウリゾウ 料金ページ:https://urizo.jp/price/
Gamma 料金ページ:https://gamma.app/pricing
ドヤマーケAI 14サービス一覧:https://doya-ai.surisuta.jp/all-in-one


