ムービーAI
テレビCMの制作費は、撮影だけで数十万円から数百万円かかります。モデルを起用すればさらに上がります。この構造があるため、CMは「予算が確保できた企業だけが作るもの」でした。
その前提が崩れています。この記事では、架空のスポーツブランドのスニーカーCMを題材に、ChatGPTで16カットの絵コンテを作り、Seedance 2.0で15秒の動画に仕上げるまでの全工程を公開します。使うツールは2つだけ、待ち時間を含めても10〜15分です。
30秒で分かる結論
使うのはChatGPTとSeedance 2.0の2つだけ。撮影・モデル・スタジオはいずれも不要
ChatGPTには「16カットを4×4のグリッドに並べた絵コンテ画像」として1枚にまとめさせる
その絵コンテ画像をSeedanceに参照画像として渡し、プロンプトを添えて15秒で生成する
プロンプトでカメラの動きを指定すると、一気にCMらしい画になる
生成の待ち時間は尺に比例する。15秒なら10〜15分を見ておく
従来のCM制作と何が違うのか
従来の流れは、企画、絵コンテ、キャスティング、ロケハン、撮影、編集、音付けでした。このうち撮影より前の工程に人と時間がかかり、撮影当日には失敗できないという緊張がありました。
AIで作る場合、企画と絵コンテは残り、キャスティングから編集までが生成に置き換わります。結果としてやり直しのコストがほぼゼロになります。撮影を伴う制作では「もう一度撮り直す」の一言が数十万円でしたが、いまはプロンプトを一行変えるだけです。
もちろん、そのまま全国放送のCMになる品質かというと、まだ差はあります。ただし企画検証、社内提案、SNS広告、展示会での参考映像といった用途なら、十分に実用の域に入っています。
用意するもの
ChatGPT … 16カットの絵コンテを1枚の画像として生成する
Seedance 2.0 … 絵コンテを参照画像として読み込み、15秒の動画にする
ステップ1:16カットの絵コンテを1枚にまとめて作らせる
この作り方の肝は、カットごとにバラバラの画像を作るのではなく、16カットを1枚のグリッド画像にまとめることです。1枚にしておくと、次の工程でSeedanceに渡すのが楽になり、カット間のトーンも揃います。
あなたはCMプランナーです。以下のCMの絵コンテを作ってください。
【ブランド】架空のスポーツブランド「ナイス」
【商品】フラッグシップの高級スニーカー
【キャッチコピー】走る理由は、自分で決める
【尺】15秒
【構成】16カット
16カットを4×4のグリッドに並べた絵コンテ画像として1枚にまとめて出力してください。
各カットには、被写体・場所・時間帯・カメラの動きが分かる絵を入れてください。この依頼で、16のシーンが4枚に分かれた形で出てきます。実際に生成された構成は次のような流れでした。
無人の交差点、夜明け前の静けさ
止まった足元へのクローズアップ
未開封の箱が届く
箱を開け、靴紐を結ぶ
覚悟を決めて光の外へ飛び出す
街を走り抜ける
屋上を越えていく
ブランドロゴとコピーで終わる
静から動へ、という起伏がきちんと入っています。CMとして成立するかどうかは、この構成段階でほぼ決まります。気に入らなければ、動画にする前にここで作り直してください。
ステップ2:絵コンテをSeedanceに渡して15秒で生成する
生成された絵コンテ画像をダウンロードし、Seedance 2.0の参照画像欄にアップロードします。4枚に分かれている場合は4枚とも添付します。
カメラワークを指定する
プロンプトでカメラの動きを指定すると、画角が変わる派手なCMらしい映像になりやすくなります。指定がないと、絵は動いていても平坦な印象になります。
この絵コンテのとおりに15秒のCM映像を作ってください。
【カメラワーク】
・被写体に向けてゆっくりドローイン
・走者を追うトラッキングショット
・足元は低い位置から、ロゴカットは見上げる構図
【トーン】夜明けの街、コントラスト高め、静から動へ
【尺】15秒15秒は待ち時間が長い
尺を長くすると生成時間も伸びます。15秒だと10〜15分ほどかかります。待っている間に別の作業を進められるよう、生成は先に投げておくのがおすすめです。
短い尺で構成を確かめてから長尺を作る、という順番にすると待ち時間の無駄が減ります。8秒で当たりを付けて、良ければ15秒で作り直す流れです。
実際にかかった時間とコスト
絵コンテの依頼と生成 … 3分程度
Seedanceへの投入とプロンプト作成 … 2分程度
15秒動画の生成待ち … 10〜15分
合計 … 15〜20分。費用は各サービスの利用料のみ
従来の制作で発生していたキャスティング費、スタジオ費、撮影スタッフ費、編集費は、この工程には存在しません。比較すべきは金額そのものより、1本目を出すまでの日数だと考えています。企画会議で出たアイデアを、その日のうちに映像で確認できるかどうかの差です。
気をつけること
既存ブランドの模倣にしない … 「◯◯風」を狙いすぎると、著作権や不正競争防止法の問題になり得る。トーンの参考にとどめ、構成は自分で組む
実在しない受賞歴や効能を入れない … 実際の広告として出す場合は景品表示法の対象になる
人物の顔は生成物であることを意識する … 実在の人物に似せる指示は避ける
権利の扱いは規約を確認する … 商用利用の可否はサービスとプランによって異なる
三森の実務メモ:16カットを1枚のグリッドにまとめる、というやり方に行き着くまでに何度か失敗しました。カットごとに別々の画像を作ると、同じ商品のはずなのに靴の形や色が微妙に変わり、つなげたときに別物になります。1枚のグリッドで作らせると、同じ画像内で描かれるぶん整合性が保たれやすい。細かい話ですが、ここが実用と作例の分かれ目でした。うまくいかない人は、まずこの1点を変えてみてください。
動画で学ぶ
絵コンテの生成からSeedanceでの動画化、完成したCMまでを、実際の操作画面つきで解説しています。
このスニーカーCM、実はAIで作りました|制作工程をすべて公開
よくある質問(FAQ)
Q. カットごとに画像を作るのと、グリッドにまとめるのとで何が違いますか?
整合性です。カットごとに別々に生成すると、同じ商品でも形や色が少しずつ変わり、つないだときに別物に見えます。1枚のグリッドとして生成させると同じ画像内で描かれるため、ブレが出にくくなります。
Q. 自社の実在する商品でも作れますか?
作れます。商品画像を参照させ、形状と色を固定する指示を加えてください。ただしロゴや細かい表記の再現精度には限界があるため、商品が大きく映るカットは実写を使い、周辺の映像をAIで作る組み合わせが現実的です。
Q. 15秒より長いCMも作れますか?
1回の生成で長尺を出すより、カットごとに生成して編集でつなぐほうが安定します。その場合はトーンの指定を全カットで共通にしておくと、つないだときの違和感が減ります。
Q. 生成に失敗したときはどこを直せばいいですか?
まず絵コンテを疑ってください。映像が平坦、何を見せたいか分からない、という失敗のほとんどは構成側に原因があります。プロンプトの語尾を変えるより、カット構成を組み直すほうが早く改善します。
Q. BGMや効果音はどうしますか?
生成された音のままだと物足りない場合が多いため、実際に使う際は別途つけることをおすすめします。この工程だけは、いまも編集ソフトの領分です。
まとめ:構成に時間を使い、撮影は生成に置き換える
AIで作るスニーカーCMの全工程は、ChatGPTで16カットの絵コンテを1枚のグリッド画像として作り、それをSeedance 2.0に渡して15秒の動画にする、という2工程です。所要は待ち時間を含めて15〜20分でした。
置き換わったのは撮影と編集であって、企画と構成は人の仕事のまま残っています。むしろ、やり直しが安くなったぶん、構成をどれだけ試せるかが差になります。まずは自社の商品で16カットの絵コンテを1枚作ってみてください。映像にする前の段階で、伝わるかどうかはほぼ判断できます。


