DX・システム
提案資料やサービス紹介スライドは、作るたびに時間が溶けます。構成を考え、テキストボックスを置き、図形を整え、色を揃える。中身を考える時間より、体裁を整える時間のほうが長くなりがちです。
この記事では、その工程を丸ごと省くスライド生成ツールをClaudeで自作した記録をまとめます。ポイントは「1ページ全体を画像として生成する」という設計判断です。一般的なスライドツールとは発想が違うため、そこを中心に解説します。
30秒で分かる結論
テキストボックスと図形を配置するのではなく、スライド1ページ全体を画像生成AIに丸ごと任せる
この設計にすると、デザイナーが作ったようなビジュアルを量産できる
入力は、資料の種類・タイトル・内容・スタイルの4つだけ。プロンプトを書く必要がない
URLを入れると、その内容を読み取って資料に反映できる
画像生成を挟むため、出来上がるまでに待ち時間がある
「編集させない」ことを最初の要件にした
今回いちばん重要だったのは、機能の数ではなく方針です。「後から編集する前提をやめる」と決めました。
スライドツールが使いにくくなる原因は、たいてい編集機能にあります。細かく直せるようにするほど操作が増え、結局は自分でレイアウトすることになります。それなら最初から、一発で完成しているものが出てくるほうが速い、という判断です。
ロゴとサービス内容を入れたら、そのまま提出できる資料が出てくる。どのツールを使うか迷わなくて済む状態を目指しました。この方針が、次の設計判断につながります。
1ページ丸ごと画像生成する、という設計
一般的なスライドツールは、テキストボックスと図形を1つずつ配置してページを組み立てます。この方式は自由度が高い一方、レイアウトの善し悪しが使う人の腕に依存します。
今回は逆に振り切って、スライド1ページ全体を画像生成AIに丸ごと任せる構成にしました。文字も図もあしらいも、まとめて1枚の画像として出力させます。
この方式にすると、レイアウトの判断がAI側に移ります。結果として、素材を配置する手間なしに、デザイナーが作ったようなビジュアルが出てきます。デメリットは後述しますが、まず「誰がやっても一定以上の見栄えになる」という点で狙いは当たりました。
Claudeへの依頼文
この方針をそのまま要件定義の依頼に書きます。
ドヤスライドというサービスを作りたいです。
画像生成AI(ChatGPT Image 2)を使って、
すべてのスライドを1ページ丸ごと画像として生成する、
ド派手なプレゼン作成ツールです。
・ユーザーはテーマと内容を入力するだけ
・プロンプトは書かせない
・後からの細かい編集は前提にしない
要件をしっかりと定義してください。ここで「プロンプトは書かせない」「編集は前提にしない」を明記しているのが要点です。書かないと、汎用的なエディタ機能が要件に混ざってきます。
出来上がったツールの入力項目
実際の画面は、次の4つを埋めるだけの構成になりました。
どんな資料を作るか(SNS資料/サービスピッチ/採用/社内共有)
サービスタイトル
詳しい内容
スタイル(グラデーション/ナチュラル/レトロ/コーポレートなど)
加えて、URLを入力すると、そのページの内容を読み取って資料に反映できるようにしています。自社サービスのLPを指定すれば、そこから提案資料が起こせるという使い方です。
スタイルは、選ぶだけで全ページのトーンが揃います。レトロを選べばレトロ調で、コーポレートを選べば一般的な提案資料の見た目で全ページが生成されます。
実際に生成したスライドの中身
テーマを入れて生成すると、構成が組まれたうえで画像生成に進みます。出てきたのは、次のような流れの資料でした。
表紙とコンセプトの説明
課題の提示(3つに整理されたページ)
サービス概要
優位性
導入して得られる結果
3段階の料金構成
問い合わせへの導線
提案資料として成立する骨格が、指示なしで組まれています。構成を考える工程ごと省けるのが、実務上いちばん効きました。
この作り方の弱点
良いことばかりではありません。1ページを画像として作る以上、次の制約がつきます。
細かい文字修正ができない … 1文字直すには、そのページを作り直すことになる
生成に時間がかかる … ページ数だけ画像生成が走るため、待ち時間が発生する
正確な数値表現には向かない … 画像なので、数字や社名の表記ゆれが起きうる
再利用性が低い … 次回に一部だけ差し替える、という使い方がしにくい
したがって、提案の初回、コンセプト提示、社内共有のような「見せて伝える」用途には強く、契約書に近い正確さが要る資料には向きません。用途を選べば十分に実用的です。
自分専用のテンプレートとして固定する
もう一段踏み込むと、ロゴと定型内容を固定した自社専用のツールにできます。毎回同じロゴ、同じ会社紹介、同じ料金体系が入る前提にしておけば、案件ごとに変わる部分だけを入力すれば資料が出てきます。
汎用ツールを使い続けるより、自社の型に合わせて固定してしまうほうが速い。自作の利点はここに出ます。
三森の実務メモ:正直に言うと、作る前は「画像で作ったスライドなんて使い物になるのか」と思っていました。実際に出てきたものを見て考えを改めたのは、体裁を整える作業が丸ごと消えたことのインパクトが想像より大きかったからです。細かく直せないのは確かに不便ですが、そもそも直したくなるのは中途半端な出来のときです。一発で見せられる水準が出るなら、編集機能はなくてよかった、というのが使ってみての結論でした。
動画で学ぶ
Claudeへの要件定義から、実際に生成されたスライドの中身までを、操作画面つきで解説しています。
【SaaS is dead?】スライド作成SaaSをClaudeで自作してみた
よくある質問(FAQ)
Q. 既存のスライドツールを完全に置き換えられますか?
置き換えではなく使い分けです。初回提案やコンセプト提示は生成で、契約条件や数値の詳細が入る資料は従来のツールで、という分け方が現実的です。1ページ画像である以上、正確な文字修正が要る場面には向きません。
Q. 生成された画像の文字は正確ですか?
画像生成である以上、表記の揺れが出ることがあります。社名、サービス名、金額など、間違えられない項目は必ず目視で確認してください。重要な数値は資料本体ではなく口頭または別紙で補うほうが安全です。
Q. デザインのトーンは自社に合わせられますか?
スタイルの選択で大枠は揃います。さらに合わせ込みたい場合は、ロゴと配色を固定した自社専用の設定にしておくのが早道です。毎回選び直すより、最初に決めて固定するほうが結果が安定します。
Q. 何ページくらいまで作れますか?
ページ数を増やすほど生成の待ち時間が伸びます。提案資料として使うなら10ページ前後が扱いやすい範囲です。長い資料は、章ごとに分けて生成するほうが待ち時間を管理しやすくなります。
Q. 画像生成の利用料はどのくらいかかりますか?
使用する画像生成サービスの従量課金に依存します。ページ数に比例するため、事前に1資料あたりの想定枚数を決めてから運用してください。
まとめ:発想を変えると、作るものが変わる
スライド作成ツールの自作でいちばん効いたのは、実装力ではなく設計の割り切りでした。テキストボックスを配置する既存の方式をなぞらず、1ページ丸ごと画像にすると決めたことで、体裁を整える工程が消えました。
AIで業務ツールを作るとき、既存サービスの機能をそのまま真似ようとすると、劣化版にしかなりません。自社の使い方に合わせて何を捨てるかを決めるほうが、結果的に使えるものになります。編集機能を捨てる、という判断はその一例です。


