ムービーAI
「うちの商品でCMを作りたいが、撮影の予算がない」。この相談は多いのですが、いま本当に変わったのはその手前です。商品の現物がなくてもCMが作れるようになりました。まだ試作品しかない、パッケージが決まっていない、そもそも企画段階でしかない。そういう状態でも、CMの形をした映像を出せます。
この記事では、実在しない新作スポーツドリンクを題材に、ChatGPTで絵コンテを作り、Seedance 2.0で動画にするまでの手順を解説します。企画のプレゼン用、社内の合意形成用、コンセプト検証用として、10分で1本作れます。
30秒で分かる結論
使うのはChatGPTとSeedance 2.0の2つだけ。撮影も商品現物も不要
流れは「ChatGPTに絵コンテを作らせる、絵コンテ画像を生成する、Seedanceに投げて動画化する」の3工程
広告代理店が絵コンテを描いて撮影に渡す工程を、そのままAIに置き換える形になる
仕上がりを分けるのはカメラワークの指定。ここを書くかどうかでライブ感がまったく変わる
そのまま商用出稿するにはAI感が残る。カット割りとBGMの調整が別途必要
商品の現物がなくてもCMが作れる、という変化
従来、商品CMを作るには最低でも商品そのものが必要でした。撮影用のサンプル、スタジオ、照明、撮影スタッフ。企画が通ってから撮影までに数週間かかるのが普通です。
生成AIで映像が作れるようになったことで、この順番が逆転しました。企画段階で先に映像を出し、それを見ながら企画を決めることができます。コンセプトが伝わるかどうかを、言葉ではなく映像で確認できるのは大きい変化です。
実際の使いどころは、商品化前のコンセプト検証、社内提案の説得材料、クラウドファンディングの説明素材、展示会での参考映像といったあたりです。完成品としての出稿より、意思決定の材料としての価値が先に立ちます。
用意するもの
ChatGPT … 絵コンテの構成づくりと、絵コンテ画像の生成
Seedance 2.0 … 絵コンテ画像を読み込んで動画にする
動画編集ソフトは使いません。素材の撮影も購入も不要です。
ステップ1:ChatGPTに絵コンテを作らせる
最初にやるのは、映像そのものではなく絵コンテです。ここを飛ばしていきなり動画を作らせると、何が言いたいのか分からない映像になります。
商品設定を先に決める
架空の商品でも、設定は具体的にしてください。名前、カテゴリ、ターゲット、伝えたい一言。ここが曖昧だと絵コンテも曖昧になります。今回の例では「夏の新作スポーツドリンク、ゴッドウォーター」という設定にしています。
絵コンテを依頼するプロンプト
あなたはCMプランナーです。以下の新商品のCM絵コンテを作ってください。
【商品】夏の新作スポーツドリンク「ゴッドウォーター」
【ターゲット】屋外で働く人、スポーツをする人
【伝えたいこと】限界の一歩手前で効く一本
【尺】8秒前後、3〜4カット
各カットについて、次を書いてください。
・カット番号とタイトル
・映っているもの(被写体、場所、時間帯、光)
・カメラの動き
・入れるコピーカットごとに「映っているもの」「カメラの動き」「コピー」を書かせるのがポイントです。この3点が揃っていれば、次の工程でそのまま画像にできます。
出てくる絵コンテの例
この依頼で返ってきた構成は、次のようなものでした。
カット1:灼熱の街 … 熱に歪む景色
カット2:限界の一滴 … 汗と渇きの描写
カット3:渇きの限界、掴む決意 … 商品を手に取る
カット4:細胞の覚醒 … 一気に飲み干し、天へ掲げる
やや大げさですが、CMとしてはこのくらい振り切っているほうが機能します。トーンが強すぎると感じたら「もう少し日常的なトーンで」と伝えて作り直せば済みます。
ステップ2:絵コンテを画像にする
構成が固まったら、同じチャットで「この絵コンテの画像を作ってください」と続けます。カットごとのビジュアルが1枚の画像として出てきます。
ここで出てくる画像の質が、そのまま完成する動画の質になります。気に入らなければ、動画にする前に作り直してください。動画にしてから直すほうが手間もコストもかかります。
ステップ3:Seedanceで動画にする
生成した絵コンテ画像をSeedance 2.0にアップロードし、プロンプトを添えて動画を生成します。
カメラワークを必ず指定する
ここがこの記事でいちばん伝えたい点です。カメラの動きを指定するかどうかで、映像の印象が別物になります。指定しないと、絵は動いているのに平坦で、目が留まらない映像になりがちです。
寄る、引く、パンする、見上げる、スローから実速に戻す。こうした動きが入ると、見ている側は「何かが起きている」と感じます。広告として必要なのは、この一瞬の引っかかりです。
この絵コンテのとおりにCM映像を作ってください。
【カメラワーク】
・カット1は寄りから引きへ、ゆっくりパン
・カット2は手元に寄る、浅い被写界深度
・カット3は下から見上げる、素早いティルトアップ
・カット4はスローモーションから実速へ戻す
【トーン】真夏の強い日差し、コントラスト高め、爽快感
【尺】8秒カットごとにカメラの動きを分けて書くのがコツです。全部同じ動きだと単調になります。
何パターンか作って選ぶ
1回で決めようとせず、3本ほど作って見比べてください。生成のたびに動きの強さや光の入り方が変わります。プロンプトを1行変えるだけなので、選択肢を増やすコストはほとんどかかりません。
この「作ってから選ぶ」が成立するようになったのが、AI動画制作の実務上いちばん大きい変化です。撮影を伴う制作では、選択肢を増やすこと自体が高くつきました。
そのまま商用で使えるか
正直に書くと、生成したままの状態で広告出稿するには、まだ手を入れる必要があります。
AI感が残る … 質感や動きに不自然さが出るカットがある
カット割りの調整 … つなぎのテンポは編集で整えたほうがよい
BGMと効果音 … 生成された音のままだと物足りない場合が多い
文字表示 … コピーの正確さが必要なら、後から重ねるほうが確実
逆に言えば、企画検証やプレゼンの用途なら、この状態でも十分に機能します。10分でここまで出せることの価値は、完成度そのものより、判断が早くなることにあります。
三森の実務メモ:この作り方を試して感じたのは、AIが置き換えたのは撮影ではなく「絵コンテを映像にする工程」だということです。絵コンテの良し悪しは、いまも人が決めています。実際、私の失敗はほとんどプロンプトではなく構成側にありました。カットごとに何を見せたいかが曖昧なまま生成すると、何度作り直しても良くなりません。逆に構成さえ決まっていれば、映像化は数分です。時間の使い方も、絵コンテに8割、生成に2割くらいの配分に変わりました。
動画で学ぶ
絵コンテの生成からSeedanceでの動画化、完成したCMの見え方までを、実際の操作画面つきで解説しています。
よくある質問(FAQ)
Q. 実在の商品でも同じ手順で作れますか?
作れます。その場合は商品画像を参照させて、パッケージの形や色を固定する指示を加えてください。ただし現時点では、ロゴや細かい表記が正確に再現されるとは限らないため、商品が主役のカットは実写を使い、周辺の映像をAIで作る組み合わせが現実的です。
Q. 架空の商品名やコピーを使って広告を出しても問題ありませんか?
企画検証や社内資料であれば問題ありません。実際の広告として出稿する場合は、景品表示法や各業界の表示規約の対象になります。効能や優良性の表示には根拠が必要で、実在しない受賞歴や数値を入れることはできません。
Q. 既存のCMに似た映像を作っても大丈夫ですか?
「◯◯風」を狙うのは、参考程度にとどめてください。既存作品の構図や演出をそのまま再現すると、著作権や不正競争防止法の問題になり得ます。トーンの参考にする程度で、カット構成は自分で組んでください。
Q. 生成した映像の権利はどうなりますか?
使用するサービスの利用規約によります。商用利用の可否、生成物の権利の扱い、プランごとの条件が異なるため、出稿前に最新の規約を確認する運用にしてください。
Q. もっと長い尺のCMも作れますか?
1回の生成は短い尺が基本なので、長尺にする場合はカットごとに生成して編集でつなぐことになります。その場合はカット間で光や質感が揃うよう、プロンプトのトーン指定を共通にしておくと違和感が減ります。
まとめ:絵コンテに時間を使い、映像化はAIに任せる
架空の新商品CMは、ChatGPTで絵コンテを作り、絵コンテ画像を生成し、Seedance 2.0で動画にする、という3工程で作れます。撮影も商品現物も要りません。所要は10分程度です。
仕上がりを分けるのは、カメラワークの指定と、その前段にある絵コンテの質です。映像化はAIに任せて、人は構成に時間を使う。この配分に切り替えると、企画の検証速度が変わります。まずは自社の商品を1つ選んで、8秒のCMを3パターン作ってみてください。


